オリジナル小説

□相棒
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私の相棒。
出会ってからまだ三カ月も経過していないのに、もう一心同体である。まるで私の身体の一部のような存在。一緒に居なければ、すぐ不安になる。
相棒、というものは、ときに重い存在だと思う人がいるのかも知れない。固い絆や結束力、その間に何人たりとも立ち入らせないような雰囲気。周囲の誰も知ることのない二人だけの秘密があるようにも見えているだろうか。相手に縛られていると感じても無理はない。
しかし、私と相棒は違うのだ。互いに相手を縛りはせずに、ただどこかで通じ合っているというだけ。言葉はいらない。どのような形であれ、どのような付き合い方であれ、相棒なのだから。





私達は目の前に未知の世界への扉を見た。
その途端に、そこに入らなければならない、と強く感じたのだ。強い決意を胸に、開いた扉の中に足を踏み入れる。いざ入ると、そこは予想以上に小さい世界であった。下に道が広がっているというわけでもなければ、上に空がある世界ですらないのだ。
その直後に、大きな波が私達を襲った。これはいわばこの世界に立ち入った者への洗礼のようなもので、唯一目に見えるのは黒や白の波の色。この小さな世界の中でしか見ることのない、珍しい波。力強く暑苦しい、けれどもどこか冷たい波だ。
そのような波は私達を捕らえると、ぐいぐいと体を締め付けた。そして、波は私達の自由を奪うばかりかどこか遠くへ私達を運ぼうとしている。


(やめて…やめて!)


心の中では必死に叫ぶものの、私達の周りではただ波が押し寄せる音しか聞こえない。その力に圧倒されて、右も左も見えないまま押し流されるのみであった。
ただ、相棒から手を離さずにきつく繋がっていることしかできなかった。
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