くりきん ネツゾウストーリー

□キンオブゴッド論
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2.あの矛盾


さて、キンオブゴッドと言えば、作中で倒すべき敵として描かれたキンでした。他の様々なキンを取り込んで自らを強化し、他のキン達を最終的に取り込むか、あるいはこの世から消失させようとするキンです。このキンは、キンオブゴッドのみが生きる世界、というものを作ろうとしていました。
そのようなキンであるにもかかわらず、作中ではまた「永遠の命をもたらすキン」として研究されてもいました。それを人間のエゴだと非難する人物も同時に存在します。
このような性質やナノアイランドの歴史上、このキンはしばしば「悪魔のキン」と呼ばれることとなります。

この呼び名です。何かがおかしいような気がします。
「キンオブゴッド」という名前を直訳すると「神のキン」になるはずです。それなのに、作中では一度もそのようには呼ばれません。むしろ、「悪魔のキン」と呼ばれています。
これが、一つの大きな矛盾です。

そして、そもそもキンの性質自体も矛盾していますね。実際は他のキン達を食い物にするという、残忍にも思えるキンです。その一方で、このキンは万病に効く、不死をもたらすとして熱心に研究する人物も存在します。
もしも本当に人々に害しかもたらさないようなキンであれば、このように明るい目で見られることなどあるのでしょうか。恐らくは見られないだろうと思います。誰かが有益だと思うような何かを見出したからこそ、このキンにある種の希望を託す人間も存在したということです。

ということは、このキンの性質や言い伝えの矛盾というのは、人々の価値観の違いや矛盾をそのまま反映したものということになるのかも知れません。ある人にとっては「神のキン」であり、またある人からすれば「悪魔のキン」だというわけです。

と、このように、キンオブゴッドへの考え方は二分されるように思います。しかし、ストーリー上で主人公がこのキンを倒さなければならなかったのは、(島民が危険に晒されて急を要するという理由を除けば)主人公やその仲間達がキンオブゴッドを「悪魔のキン」だとする考え方に傾いたからでしょう。

それならば、何故そちらに傾いたのか?
勿論、周囲の大人達が語気を強めてこのキンの歴史や性質を説明したことも、その理由に挙げられるでしょう。
あるいは、主人公がリクウの末裔であると明かされることも理由の一つかも知れません。だからこそ、キンオブゴッドを倒すことが自分の使命だと感じたということですね。

しかし、その他にも、くりきんの世界観といいますか、ナノアイランドでの信仰や価値観と言うべきか……そういったものの存在を見逃すことも出来ないと思うのです。
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