捧げ物

□Manyhappyreturnsoftheday
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「ねぇツナくん、明日どっか行かない?」

D・スペードとの戦いを終えて暫く経ったある日。

炎真はそう言った。

Manyhappyreturnsoftheday

「わぁ…分かってたけど、混んでるね」

一人言のように呟くと、炎真は隣で「そうだね」と返してきた。

やって来たのは遊園地だ。

土日の為混んでいるのは分かっていたが、まさか入園に30分もかかるとは思わなかった。

「これじゃ皆乗るのに時間かかるけど…何から乗る?」

入園の時に貰ったパンフレットを開いて問い掛ける。

炎真も自分の分を開いてアトラクションの欄に目を走らせた。

この辺りで一番大きい遊園地の為か、ジェットコースターや観覧車まである。

でもジェットコースターはちょっとなぁ…

「…お化け屋敷と、ジェットコースターは嫌だなぁ…怖いし…」

炎真が隣でポツリと呟いた言葉に、思わず苦笑してしまった。

…何か、うん。基本的に俺達は同じなようだ。

見た限りで怖くなさそうなのは観覧車とコーヒーカップくらいか。

あ、メリーゴーランドがあった。

取り敢えずその3つを提案すると、炎真も同じ結論に辿り着いたようでこくりと頷いて笑った。



「あははは! 笑ったねー」

「…うん、ちょっと休憩」

コーヒーカップから降りてくると、炎真はぐったりと近くのベンチにもたれ掛かった。

どうやら俺が回しすぎてしまったらしい。

「炎真、大丈夫?」

はい、と自販機で買ってきた水を渡す。

それを受け取って一口飲むと、困ったように苦笑してきた。

「…何で、ツナくんは平気なの」

「んー…何でだろ。リボーンのスパルタのせいかも…むしろそれのおかげ?」

俺も一口飲んで笑いかける。

何だかだんだん自分のスペックが上がっているような…

まあいっか、と思考を放棄して炎真を見やる。

さすがにこの状態ではメリーゴーランドと観覧車は無理か…

他に乗れそうなアトラクションはないかとパンフレットを捲っていると、炎真がちょいちょい、と服の袖を引っ張ってきた。

「ん? 炎真、どうしたの…って、わっ!?」

顔をあげると、目の前に強面のオジサンがいた。

ニヤニヤと笑ってこちらを見ている。

しかも周りに注目されていて、逃げ出す事も出来ない。

超直感が無くても嫌な予感しかしなかった。

「…えっと、あの…何ですか?」

兎に角この状況をどうにかしようと話し掛けてみる。

どうせカツアゲだろうな…とか思いつつ、パンフレットを仕舞った。



「って! やっぱりじゃんっ」

炎真の手を引いて駆け出す。

やはりカツアゲで、ぶつかってもいないのに言いがかりをつけられたので、ソッコーで逃げ出した。

全力で逃げているのに案外足が速く、中々振り切る事が出来ない。

ならば、と曲がり角にあった建物の中に飛び込んだ。

隙間から覗いてみるとカツアゲしてきたあのオジサンは俺達に気付くことなく通り過ぎて行ったので二人してほっ、と息を吐いて顔を見合わせる。

「…あれ? そういえばここって…」

漸く逃げ込んだ建物の方へ頭が回り、そっ…と後ろを振り返る。

照明がなく、ひんやりとした空気が流れていて…って…

「ここ、お化け屋敷!?」

「えぇっ!?」

慌てて出ようとするけど、係の人が居るため戻ることも出来ない。

進むしかなかった。

「…うぅ…進むしか、ないね…」

「う、うん…」

薄暗い中パンフレットを引っ張り出して説明を見る。

どうやらここは迷路とお化け屋敷が一緒になったアトラクションらしく、最短でも脱出に15分はかかる…って、ちょっと!?

よりにもよってそんなトコーー!?

とその時、トントン、と肩を叩かれた。

え?

炎真は横にいるから違うだろう。

じゃあ誰…!?

一瞬で背筋が寒くなり、しかし怖いもの見たさだろうか、つい振り返ってしまった。

そこに居たのは…

全身血塗れの女性だった。

「「っぎゃあああーーーッ!!!」」

リボーンに聞かれたら確実に情けない、と言われそうな悲鳴をあげて、俺達は逃げ出した。


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