小説1

□スタスカ小話集
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俺の誕生日は夏休みど真ん中ということもあり、昔から家族以外に祝われるということがなかった。

他の友達を祝いながら、良いな…と寂しくなることもあったが、年をとるにつれて誕生日に感じる特別感も、いやそれ以前に自分の誕生日にすら興味を失ってしまった。

だから今年だって気がついたら過ぎているんだろう。

弟に言われてやっと思い出した時、家族に呆れられながらもそう思った。

琥太郎センセにすら教えてないんだ、祝われることなんてないだろう。

そう思いながらも、学園に戻ってからは仕事に忙殺されて思い出す暇すらなかった。

HAPPYBIRTHDAY

「…え?」

私は陽日先生の落とした手紙を拾おうとして思わず固まった。

「兄貴へ」

そう始まる手紙。

陽日先生が落としたことに気が付いて駆け戻って来たので渡したが、読んでしまったメッセージが頭の中から消えなかった。

「(…先生…8月11日が誕生日だったんだ…)」

どうして教えてくれなかったんだろうか、このクラスなら夏休み中だろうと集まって盛大に祝ってくれるだろうに。

ましてや普段お世話になっているのだ、恩返しくらいしたいのに。

…忘れてたのかな?いや、自分の誕生日って忘れるものだろうか?

知ったからにはお祝いしたい。もう過ぎてしまったけど、びっくりさせてあげたいな。

そう考えて私は粟田くん達が集まって騒いでいるところに向かった。

「ええっ!? 直獅の誕生日!?」

「う、うん。もう過ぎてるんだけど、日頃の感謝を示せたらなあ、って…」

「なんだかんだで僕も陽日先生にはお世話になっているからね。良いね、パーティーか」

「やるからには盛大に祝ってやろうぜ! 直ちゃんびっくりするだろうな〜」

「それは同感! 直獅先生のことだから泣いちゃうんじゃないか?」

「僕もそう思うよ。こうなったら他の皆も巻き込んじゃおうよ!」

柿野君の言葉に皆が口々に賛成する。

陽日先生に内緒で星月先生や水嶋先生に協力を頼んで、決行は明日の9月11日にして…準備は整った。

後は明日を待つだけだ!


「直獅、これ頼むぞ」

「ん? …なにこれ! 琥太郎センセ、絶対溜め込んでただろ!」

「大丈夫だ、いち教員にも出来る仕事だぞ? ああ、明日の正午までに頼む」

「しかも時間ない!? ああもうっ、わかったやるよ!」

くるりと背を向けて再びパソコンに向かい合い、仕事を始める直獅。

この分ではあいつらが何かを企んでいることにも気がつかないだろう。

まあ気がつかせない為に仕事を頼んだのだが。
それにこれは罰でもあるんだぞ?

もう一年以上も一緒にいるのに、誕生日すら教えてくれなかった罰。

…まあ、俺も聞くの忘れてたし、おあいこか。

さて、仕事をやりつつ直獅を見張るか。

郁は多分あいつらに付き合って準備をしているのだろうし。

俺も再びデスクに向かって仕事を仕分け始めた。


翌日。

今日は午前中は授業がなく、朝だけホームルームに出て琥太郎センセに頼まれた仕事を片付けていた。

徹夜したおかげでかなり片付いた。

――なんで今日は粟田達罠を仕掛けてこなかったんだ?

――なんかそわそわしていた気もするし…今日仕掛けてこなかったのは明日油断させる為とか…?

頭の隅でそう考えながらも、指先はよどみなくキーボードを叩き続ける。

「――終わったぁ…!!」

…なんだろう、このものすごい達成感。

時計を見ると指定された時間より二時間早かった。

琥太郎センセの携帯に終わった事とメールで送っておく旨を伝えて、パソコンにフォルダを添付して送信する。

全てを終わらせると、急に眠気が襲ってきた。

授業は六時間目だし…それまで少しだけ寝よう。

アラームをセットして、机に突っ伏す。

そこで俺は意識を眠りへと落としたのだった。


「陽日先生、ちょっと良いですか?」

「え、うわあっ!?」

授業とホームルームを終えて職員室に戻って来ると、いきなり水嶋に手を引っ張られた。

形だけは良いですか、と聞いてはいるものの、俺の答えなんて聞いちゃいない。

どうにか体勢を立て直すも水嶋の足は止まらない。

そのまま連れていかれたのは、さっきまでいた二年天文科の教室で。

「開けて下さい」と水嶋に促される。

俺、何か忘れ物でもしたっけ…

促されるがままに扉を開ければ、パアンッ、という音が響き渡った。

「っ!?」

「「陽日/直獅/直ちゃん先生、誕生日おめでと
うございます!」」

「え…え!?」

音はクラッカーの音だった。

何事かと教室を見渡してみれば、机の上には「誕生日おめでとう」と書かれたプレートののっかるケーキ。

そして、生徒達と何故かいる琥太郎センセの笑顔。

呆然と立ち尽くしていると、水嶋がいつの間にか教室に入ってきて俺の肩を軽く叩いた。

「そんな訳わからないって顔しないでくださいよ。誕生日おめでとうございます」

「え、誕生日? …でも、俺の誕生日はもう過ぎて…」

「だから、夏休みに祝えなかったから一ヶ月後の今日にやろうってなったんですよ」

「そういうことだ。せめて教えてくれていれば当日に祝えたんだがな。どうせ忘れてたんだろう?」

「う、うん…弟に言われるまで忘れてた…」

「やっぱりか。お前のことだからソワソワしてるか忘れてるかのどっちかだと思ってたんだが…後者だったか」

「誕生日は陽日先生が陽日先生になった大切な日なんですから、お祝いしたかったんです。もう、忘れないでほしいです」

「夜久…」

まさか、この年になって祝ってもらえるなんて思っていなかったから、こいつらが頑張って準備したのかと思うと…凄く、嬉しい。

「皆、ありがとな!」


直獅誕生日おめでとお!!
間に合った良かった…
文章がぐちゃぐちゃだけど、後で直しに来るかも知れないけど、これ以外に何も出来ないけど…大好きです!
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