小説1
□他ジャンル小話集
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※正臣が復学してます。
――キーンコーンカーンコーン…
ダダダッ
バーンッ!
「みっかど〜!!!」
「うわ!?正臣…なんでチャイムと同時に飛び込んで来るの…?」
ちょうど立ち上がろうとした時に抱きつかれたためバランスを崩しかけた帝人は、そんな幼馴染みを睨み付ける。
教科担当の先生も苦笑いして「紀田、ホームルームに戻れ」とだけ注意して教室を出ていった。
「先生もああ言ってるし、こっちもホームルームあるんだから戻りなよ…」
「へっへ〜、今日は担任も副担も出張でいないから、大丈夫だぜ!」
「そうなんだ…じゃなくて! こっちもホームルームあるの!」
「じゃあ混ざる」
「ちょっと!?」
最早恒例となっている幼馴染みのやりとりに、クラスメート達も苦笑気味だ。
結局帝人が正臣を追い出してこのやりとりを全て見ていた担任に司会を押し付けた事で決着がついたのだった。
「…え? 呪いのテレビ? なに正臣、ついに頭沸いたの?」
「違えって! なんだよ帝人、この都市伝説知らねぇのか?」
「ネットで噂になってたことくらいは知ってるけど、どこ見ても内容の書き込みがなかったから、具体的な事は今日調べるつもりだったんだけど…」
「ふっふ〜! 聞いて驚け! この紀田正臣様が聞いて来てやったぜ!」
「どうせたまたま耳にしたから自慢したかったんでしょ」
「な、何でわかった!? 帝人、さてはお前エスパーか!?」
「…√3点」
「だからそれってつまり何点!?」
「え、言って欲しいの?」
「遠慮しときます」
丁重に断りつつも、教室に残っていた杏里を連れて出ていこうとする正臣。
杏里は慌てて正臣の腕の中から抜け出し、鞄を抱え箒を片付ける。
その間に自身も帰る準備を整えた帝人は、とりあえず鞄で正臣を殴っておいた。
――「あ〜、痛ってぇ…帝人、お前の鞄は凶器以外の何物でもねぇよ…」
「そう?」
「教科書やらノートやらをきっちり持ち帰る優等生なお前の鞄は重いんだぞ! 見ろ、俺のリュックを!」
「で正臣。情報って何?」
「華麗にスルーしやがった!? お父さんそんな子にお前を育てた覚えはありませんよッ」
「園原さん、正臣の事はスルーしていいからね」
「はい」
「またもやスルー!? てか杏里まで!」
コントのような会話を交わしつつ池袋の街を歩く。
そしてある電気屋さんの大画面のテレビの前で正臣の足が止まった。
「よっし時間通り!」
「「?」」
腕時計を見てそう言うと、正臣はくるりと二人の方を向いて説明を始めた。
「ここのテレビの事なんだよ、呪いのテレビってのは。なんでもこの時間帯にここを通った人を引きずり込むらしい。まあ、それだけだとよくある都市伝説だけどよ、このテレビの前で行方不明になった人が実際にいるんだとよ」
「へえ、それは確かに…凄いね」
「ですね」
辺りを見れば路地裏で周りからはちょうど死角になる場所。
電気屋さんは既に潰れていて、確かに都市伝説にはちょうど良いかもしれない。
「見掛けは普通のテレビだね」
帝人はゆっくりとテレビに近付いてテレビに触れてみる。
普通のテレビと何ら変わりはない。あるなら、そう。それは…
ちらりと帝人は画面をみやる。
その途端、何故か頭がぼうっとしてきた。
思考力を全て奪われ、無意識のまま腕が画面に伸びる。
そして、指が画面に触れそうになった、ちょうどその時。
「帝人!」「竜ヶ峰くん!」
はっと、突然思考が戻ってきた。
「…え…?」
状況を飲み込めず、二人を見る。
何故か皆して地面に尻餅をついていた。
「…あれ、僕…」
「っはああぶなかったあ! 帝人、大丈夫か!?」
「大丈夫ですか!?」
「え、うん、大丈夫だけど…一体何が…」
「…覚えてねえのかよ? 今お前、テレビに吸い込まれそうになってたんだぞ?」
「え、…ええ!?」
言われて思わずマジマジとテレビを見つめる。
じわり。
影のような物が、テレビの隙間から滲み出した。
気がつけばそれは虹色の光になって帝人達を囲んでいて。
為す術もなく、帝人はそこで意識を失った。
*