小説1

□悲しみの向こう側にあるもの
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プロローグ

今日は待ちに待ったST☆RISHのデビューライブ当日。
メンバーの一十木音也はそわそわしながらダンスの振り付けや歌の復習など、今日やることをなぞっていた。
「はあ、今日かあ〜」
緊張と少しの不安に溜め息が零れ落ちる。
これから、俺達は夢を叶えにゆく。
夢を叶えることが、恩返しになるかはわからないけれど。音楽を、歌を思い切り楽しんでいけたら良い。そして、そこには春歌ー君がいる。
トキヤに声をかけられ、舞台袖に行くと既に何千という人が今か今かとメンバーの登場を待っていた。
感嘆の溜め息がまた零れ落ちる。
こんな沢山の人に、俺達の門出を見守ってもらえるんだ。
「音也くん」
「! 春歌! あれ、客席にいたんじゃ…」
「ええ。でも、音也くんのことが気になって来てしまいました。…漸く、スタートですね」
「うん。春歌、君も今日、俺達が歌い出した瞬間に作曲家としてデビューする」
「はい。光栄です! …ステージ、頑張って来て下さい。今の音也くんの全てを、ここに。」
そっと手を重ねて、誓い合う。
そうして皆を見やれば、力強い笑顔で頷いてくれた。
不安は、とっくに消えていた。
「じゃあ春歌、行って来ます!」
「行ってらっしゃい!」
そっと手を離して、春歌に微笑みかける。
そうして光の中へと俺達は飛び込んでいった。
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