赤い鈴
夕暮れ 遠くに伸びる 長い二人の影を目で這いながら 手をつないで帰った 鳴る小さな 小さな 鈴の音 一様に並んでいる鳩時計と一緒に鳴るよ りんりりぃん 響く小さな小さな音     ある朝 彼はお偉いさん 「君は僕がいなくても平気ですか?」 震えるその手から漏れている 堂々巡りの迷妄 とても汚い色をした 吐き気を催す丹の笑み りんりりぃん 響く彼女の鈴の音 白装束の老婆が背中で笑う そうさ ぺろりと舌出しながら 「右手は空へ 左手は海へ捨て 立派に蒼天仰げよ!」 と諭う鴉たちは右ならえ
至極是当然と並べ立てた理想と幸せは雨催い 茫漠と広がり解ける 耳元で囁く 「鬼さんこちら 手の鳴るほうへ」 白雲消えていく
「嘘をつくキサマらの舌なんてチョン切って捨ててやる!ずっと待つんだ!彼を待つんだ!」 見えぬ聞こえぬ 「何もないほうがいい」と笑う 金魚鉢に写る彼女はくるくる流れる
「お元気ですか?」 彼女の手紙 ある日を境に途絶えた
何度目かの緑雨に染まる鳥が風を連れてきた でもいない あの子は黙して音色 あの飴色空 影を延ばすこと無いでしょう 鈴は鳴り響く
「僕は帰ってきたよ!」 鴉の喚声 暮色に消ゆ 彼は走った! そして涙こらえて そっと扉開けた! そこには 彼女の時をのせた 鈴の音だけが

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