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□あなた依存症
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何度目の冬だろう。


何時もと変わらない歩調で
私たちは真っ白な上を歩く。


赤くなった手にハァっと息を吐くけど、それは白くなって消えていった。


「…手」


彼はさっきまでポケットに突っ込んでいた手を出して
私の前に差し出した。

その手は想像していたより冷えていた。



「…冷たいね」

「そう?」



冷たい風が頬をさす。

空からは雪が降ってきた。


「ん――…おでんでも買う?」


私はコンビニを指さした。

「買う!」


「ぁ…」


「何?」


そうだ。

去年も私たちはこの道を歩いている途中、このコンビニに寄ったのだ。


コンビニのおでんなのに

ここのコンビニのは

とっても



不味かった。



「なした?」



彼は覚えていないのだろうか。

私だけが覚えてるのだとしたら、少し寂しい気もする。

ただそこから溢れでてくる思い出は

温かくてちょっとムズ痒いものだった。


彼の隣を歩く、それがとても幸せな事なんだ。

私は嬉しくなって彼の腕に抱きついた。



「そんなに寒い?」

「…ううん!」



今年の冬もあなたが居てくれる。

それだけであたたかい。




*あなた依存症*







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