clap

□桜の雨
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また春が来た。


黄砂で霞む世界を消すように降る雨。


今日は生憎の天候である。


買ったばかりの傘にポツポツと音を出す雨

買ったばかりのパンプスを汚す水溜まり。



「雨の日のデートは楽しいですか?」


不機嫌に尋ねてみた。


「んー、うん」


突然呼び出され、突然デート。

彼はいつも突然である。


「いや…か?」


そんなふうに言われると、いやなんて言えないじゃない。



「…ううん」


「そっか。よかった」



いつも突然で勝手だけど、

私はいやとは言えない。

自分でも驚くほどに彼が好きだから。




「ぁ…桜」


傘を持ち上げ彼が指さす。

「…ほんとだ!」


桜の木にぽつぽつと咲いていた花びら。

雨が当たる度、小枝が揺れる。



「散らないかな…?」

「このくらいなら散らないよ。」



彼は少し笑って私に手を差し出した。



「花見しようか。」

「…うん!」



やっぱり私は

突然で勝手な彼が好き。



*桜の雨*






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