また春が来た。
黄砂で霞む世界を消すように降る雨。
今日は生憎の天候である。
買ったばかりの傘にポツポツと音を出す雨
買ったばかりのパンプスを汚す水溜まり。
「雨の日のデートは楽しいですか?」
不機嫌に尋ねてみた。
「んー、うん」
突然呼び出され、突然デート。
彼はいつも突然である。
「いや…か?」
そんなふうに言われると、いやなんて言えないじゃない。
「…ううん」
「そっか。よかった」
いつも突然で勝手だけど、
私はいやとは言えない。
自分でも驚くほどに彼が好きだから。
「ぁ…桜」
傘を持ち上げ彼が指さす。
「…ほんとだ!」
桜の木にぽつぽつと咲いていた花びら。
雨が当たる度、小枝が揺れる。
「散らないかな…?」
「このくらいなら散らないよ。」
彼は少し笑って私に手を差し出した。
「花見しようか。」
「…うん!」
やっぱり私は
突然で勝手な彼が好き。
*桜の雨*