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□君の知らないうちに
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「ふぅ・・・・これは、困りましたね・・・」
五郎左は苦笑いしながら呟いた。
彼がこの部屋を訪れたのはつい先ほど。
なんとなく彼女に会いたくなった五郎左は彼女―草薙かさね―の部屋を訪れたのだ。
入っても良いか、と訪ねても返事はない。
この時間には部屋になるはずなのに・・・
と、戸を開けると先ほど返事をしなかった少女が壁にもたれて座っていた。
どうやら、彼女は寝ているらしい。
何故このような体勢で・・・と思いながら五郎左はかさねの隣に座った。
すると彼女は五郎左の肩に頭を乗せてきたのだ。
そして現在に至るわけなのだが・・・
これは拷問だろうか?と問いたくなるほど彼女と密着していた。
そんなふうに思うのならばただ床に寝かせればないだけの話なのだが、離れるのも惜しい気がして離れられない。
不意に彼女が声を漏らした。
「ご・・・・ろ・・ざさ・・・・・」
これはあれだ。理性を保てというほうが無茶な話だ。
と理性を失った五郎左は頭のどこかで思う。
そして・・・
少女が倒れないように、頭を支え
薄く開いた唇に自分のそれを重ねた。
重なっていた唇が離れたとき、罪悪感と後悔にも似た何かが沸きあがってきた。
またかさねの頭を自分の肩に乗せる。
落ち着こうと、深く息を吐く。
(・・・柔らかかった)
不意に先ほど自分の唇と重なっていたかさねの唇の感触を思い出す。
ダメだ。顔が熱い。
これは――彼女にはいえないな。
と心の中で苦笑いをし、心を落ち着かせようと目を閉じた───
「ご・・・・ざ・・・・
ごろ・・・・・
ごろーざっ!!」
「あ、あんまり大きい声だしちゃだめですよ!」
(・・・・この声は、犬千代とかさね殿?)
重い瞼をあけると目の前には犬千代とかさねと内蔵助の姿があった。
いつのまにか眠っていたらしい。
「・・・あ、起きちゃいましたか、五郎左さん」
ほんのり頬が赤く染まった少女はやってしまった・・・と苦笑いする。
そんな彼女に五郎左は微笑んだ。
「大丈夫ですよ、かさね殿・・・これは一体・・・?」
「かたねとあそぼーと思ったら、ごろーざ寝てたから起こしたっ!
くらは何か来た!」
「何か来た、じゃねーよ!
・・・たまたま通りかかったから・・・・」
「・・・そうですか。」
なるほど、これは恋の敵・・・・というものか。
負けられないな──・・・
と思いながら先ほどのことを思い出す。
そしてこのあと、恋敵がまだいた事を知る。
それは四半時の出来事
五郎左が寝ている間にあった事はまた別のお話。
→あとがき的な何か