unicorn strats

□ユニコーン入学の日
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「――というわけで皆さん、1年間一緒に頑張りましょうね」
目の前にいる、小柄で頼りない印象の山田真耶副担任先生が挨拶を終えて、出席簿を取り出しながら「じゃ、じゃあ皆さん自己紹介お願いします。えっと、出席番号順で」と催促した、したはいいけど無反応、誰か反応しろと思ったけどそうもいかない、なぜか?
俺以外、みんな女だから・・・、というのが理由の一つだが、実はもう一つある。
俺はこの世界の人間じゃないからだ。



「みなさーん!ご飯ですよー!」
居間からロラン兄さんの声が聞こえる、だけどそれは天井という薄くもとても堅い板でくぐもった声だった。
俺、バナージ・リンクスが暮らしているのは、天井裏だった。
『放送、または最終巻発売から1年間は兄弟入りさせない』 それが旧シャアスレ「歴代主人公が兄弟だったら?」スレ鉄の掟だった。
そのため俺はユニコーン最終巻発売から向こう1年間まで、こうして薄暗い天井裏での生活を強制させられていた。
「ロラン兄さんの夕飯か・・・・・・早く食べたいな」
俺の普段の夕飯は、天井裏からコッソリ抜け出してバイトしているコンビニで買う弁当とおにぎり、主夫がいるのになんてひもじいんだ・・・・・・。
そして夕飯を食べた後、俺は持ち込んだ小型テレビでバラエティーを見た後、兄弟全員が寝る深夜まで一旦寝る、でないと風呂に入れないからだ。
そんなある日、俺は奇妙な夢を見た。
(ここは・・・・・・一体?)
そこは、なんとも幻想的な空間で、俺はその空間に浮かんでいた。
(あ・・・・・・白鳥)
その幻想空間の向こう側から白鳥が飛んできた、白鳥とこの空間、間違いない。
「ララァ・・・・スン」
「あら?随分とヒマそうな顔ね」
褐色の肌をした少女、ララァ・スンさんは、時々他人の夢に現れる傍迷惑な行動をしてくる。
「ヒマじゃないです、ただ・・・」
「トロワスレでさえもはぶられて鬱憤がたまってる?」
図星だった。
兄さんや弟と比べ個性が薄い俺は、個性をつけようとトロワスレに向かった、向かったはいいが、誰もネタにしなかった。
悲しい事だが、俺達ネタスレのキャラクターはネタ職人が書いてくれなきゃ何一つ行動できない。
「ウフフッ、だったら、しばらく他の世界に行くなんてどうかしら?どうせ天井裏ネタの頻度や長さなんてたかがしれているから、いなくなっても無問題だしね」
「何気に毒吐きますね」
この人、もしかしたらとんでもない悪女じゃないかとすら思えてきたぞ。
「だったら、IS世界に行くのが無難ね、バトルロボット物で感覚近いだろうし」
「いや人の話聞いてます?」
「それじゃあいってらっしゃい。私はあなたを見たいだけだからアドバイスできないから、私の分身をつけてあげるからね〜!」


「だから人の話を聞けっていってるだろー!」
このセリフで目が覚めた、部屋で。
見たこともない、普通の部屋だった。ベッドがあり、勉強机があり、本棚がある普通の部屋だった。
(夢・・・じゃないな)
天井裏との違いに戸惑いながら俺は部屋を出て洗面所に向かい、この世界で過ごす自分を鏡越しに見てみる事にした。
「・・・・・・書き込み量少ないな、予算の差かな?」
「織斑一夏、それがあなたが暮らす世界での名前でございます」
「ウワッ!マサカキ!?」
隣にいたのは、かなりエキセントリックなタキシードを着込み、常に不気味な笑顔を浮かべる男、マサカキだった。
ちなみにマサカキは、ガンダムともISとも関係ないCのキャラクターだ。
「マサカキ・・・という人物に覚えはありませんが、私はララァ様の使い、貴方様のサポートをするためだけの存在、ですから」
「貴方様の記憶のイメージを使わせてもらってます」
隣にいたはずのマサカキは天井からぶら下がっていたが、本家マサカキも同じ事やってたから特に驚かなかった。
「サポートったって、何やるんだよ」
「主に金銭に関する事でございます」
「金銭?」
コイツは元々、金融街の案内人・・・何を言い出すかわかったもんじゃない!気をつけなきゃ。
「ハイ、貴方様がお金にならない労働をした場合、私の独断と偏見でその報酬を計算、貴方様の講座にお振り込みさせてもらいます。まあ主婦の方の家事労働の試算と似ております」
「ちなみに聞くけど、それは"日本銀行券"なのか?それとも"ミダスマネー"なのか?」
ミダスマネー、金融街が発行する"金"であって"金"じゃない、自分の未来そのものを金にしたもの・・・・・・。
それを持ち込んだために、Cの世界は破滅手前にまで追い込まれた。
「・・・・・・日本銀行券、ではございません。しかし、この世界ではアントレは存在しませんし"C"も存在しません。ですのでご安心を」
そう言いながら、マサカキは俺に銀行のカードを手渡した。
そのカードに描かれていたのは、ヒゲの生えたオレンジ・・・・・・、Cで俺が使ってたカードだった。
「このカードを使えば、日本全国いつでもどこでも手数料無しでお引き出しがご利用できます。では、私はこれにて」
そう言い残しマサカキは消えていった。まるで元々いなかったかのように、その場から一瞬で消えていた。


それから数日後、今に至っている。数日間の生活でなんとなく分かったんだけど、どうやら俺は織斑一夏の体に魂だけ入れられた状態らしく、思い出そうとすれば一夏としての記憶が思い出せる。ただ、一夏としての人格は完全に俺が支配しているのか、出てくる気配は全く無かった。
しかし困ったな・・・・・・360゚見渡しても女の子ばかり、しかもレベル高い。さすがライトノベル主人公様、ハーレムライフ満喫し放題、か。
「・・・くん、織斑一夏くんっ!」
「ウワッ!すいません!ちょっと考え事を・・・・・・」
やった・・・・・・やっちまった・・・・・・。周りからクスクスと笑い声が聞こえる。
「あっ、あの、大声出してごめんなさい、怒ってるかな?でもゴメンね!今自己紹介で今『お』だから・・・」
「わ分かってますから慌てないでください!」
何なんだこの先生っ!新任教師でもここまでテンパる事はないぞ!?
とにかく自己紹介だ・・・・・・もう半分失敗してるとはいえ、ここは重要だ。アナハイム工専の自己紹介何やったかな・・・・・・、とりあえず名前と出身中学と趣味やれば平気だろ。
「織斑一夏、出身中学は市立綾瀬中で、趣味は・・・・・・ガンプラ作りです。よろしくお願いします」
最後のガンプラ作りは半分籠もったとはいえクラス中が聞いたようだった。
・・・・・・そういや、俺なんでこの学校入るハメになったんだろ。ああ思い出した、あれは中3の頃・・・


『一夏、お前IS学園受ける気ないか?』
それは、まだ秋が始まったばかりの話だっ
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