‡薄桜鬼・文処‡
□過去拍手文
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シアワセノカタチ〜side:左之〜
――――疲れた。
重い身体を引きずって帰路につく。
しかし………
自分の部屋のあるマンションに近付くにつれ、軽くなる足取り。
ふと自室のある辺りを見上げると、自然に顔が綻ぶ。
一人暮らしの部屋に灯る、暖かい明かり。
―――……カチャ…ッ
部屋全体に広がる味噌汁の匂い。
暖かい空気。
……幸せの満ちる雰囲気。
「平助……?」
いつもなら玄関を開けた音で飛び出してくるのに、今日はそれがない。
――――って事は…
そっとリビングに足を運ぶと、予想通りの展開に、思わず頬が緩んだ。
俺の帰りを待ちかねて寝ちまった、クッション抱えて転がる平助が可愛くて………
「平助……」
柔らかな髪を撫でながら、声をかけた。
「…左…之さん」
大きな深緑の瞳が俺を見つけると、満面に笑みを浮かべる。
「ごめ…ついウトウトして…。お迎え……出来なかった…」
まだ夢現の寝ぼけ眼を擦りながら、寝起きでまだ舌が回らないのか、俯きながら小さく呟いている平助が愛しくて、頬に手を添え顔を上げ、額に唇を落とす。
「いや…こっちこそ遅くなって済まねぇ…」
「……くすぐってぇ…」
照れているのか…顔を真っ赤にしながらも、それでも笑いながらも、俺の首に手を回しながら
「おかえり……左之さん…」
耳元で囁かれた、俺しか知らない包み込む様な平助の声音に…思わず腕に力を込めて、大切な存在を抱き締める。
「ただいま、平助」
俺の帰る場所は…平助、お前だけだから………
いつまでも………
この言葉………
言わせてくれ
それが―――――
俺の幸せだから……―――――
(了)