‡薄桜鬼・文処‡

□過去拍手文
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   〜言えないよ〜 







お前は知らない。
一目見たその瞬間から。



その屈託のない笑顔
その素直な表情
その何気ない仕種



全てから目が離せない。





「左之さーん、いる?」

「平助…お前なぁ…学校ではせめて先生って呼べよ」

「いいじゃん、誰もいねーし」

「ったく…仕方ねー奴だな…。で?何の用だ?」

「んー?ここが解んなくてさ。教えてもらおーかなって思って」

「またかよ…って、これ古典じゃねぇか?土方さんに聞けよ」

「えー?!」



えー?!じゃねぇよ。
放課後、いきなり体育準備室に来るなりこれかよ……

誰もいないからいいものの…
―――いや、誰もいないから余計心臓に悪い。

無邪気に顔を近付けながら、俺に質問をするお前。

平静を装うのが精一杯。




見栄や世間体、全てを投げ打って………
お前を好きだと言えたなら。

こんなに苦しい思いは、しなくていいのか?




―――いや

お前に拒否され、避けられるなんて耐えられない。




なら……―――


苦しくても
辛くても……………


お前の笑顔を見続けたいから




お前を“好き”だと言う感情は




決して出さない。





………………言えない



お前を“好き”だなんて…………






(了)
 
 
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