‡合作処‡
□Sweet Valentine
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今日は恋人、平助と所謂お家デート。
ソファーに二人で座り、たわいない話をしていたら、ふともうすぐバレンタインだと気付き…
「なぁ、平助ー?今年はバレンタインデーどうするよ?」
と平助に話を振ってみた。
「左之さんチョコ欲しいのか?毎年あんなに貰ってるのに?」
何だか素っ気ない返事が帰って来た。
「あ?仕方ねぇだろ…?くれるモンをいらねぇって言う訳にはいかないしな… 何だ…ヤキモチか?」
「ベ、別にそんなんじゃねぇよ!……ただ、そんなにいっぱいあったら食うの大変そうだし……」
分かり易すぎる平助の態度と語尾になる程に小さくなる声に、つい意地悪を言いたくなった。
「ふーん…じゃあ、平助は俺が他の奴からチョコを貰っても…平気なんだな…?」
俺から逸らした顔を此方に向けて尋ねる。
「それは……やだけど……しょうがねぇじゃん…。だからチョコじゃない方がいいかと思っただけ!」
ふてくされた様な…寂しげな顔。
泣き出しそうな複雑な表情で叫ぶ平助が可愛くて仕方ない。
「怒んなって…俺が貰うモンは結局お前が食うだろうが…。 ん?平助はチョコ以外をくれんのか?」
「左之さんが食わせるからじゃん!…だからあんまりチョコ食わねぇかなって思ってさ…」
毎年、数だけは貰うチョコ全て、平助の腹に入る。
勿論菓子は嫌いではない平助だが、大量のチョコを完食するのは、おそらくそれだけが理由ではないんだろう事は解っていた。
「平助甘いの好きだろ?いつも旨そうに食ってるじゃねぇか。 あー……甘いモンは苦手だからなぁ…。 で?平助は…何くれるんだ?」
「たしかに甘いもの好きだけどさ…。んじゃ、チョコにする!絶対全部食えよな!」
「拗ねるな拗ねるな…ま、甘いのは苦手だけど…お前からなら喜んで食うぜ?
勿論……本命だろうな?」
「どういう意味だよ!恋人に義理とかおかしいだろ!……やっぱりいらないんじゃ…」
怒ったり嫉妬したり落ち込んだり…コロコロと表情の変わる平助の頭を撫でながら、その体をこちらに引き寄せた。
「ばぁーか…そんな不安そうな顔すんな…なら…今年は本命のお前からしか貰わねーからよ?」
「左之さん…それ、無理すぎる…。ま、でも左之さんがどうしても食べたいんならチョコ用意してやるよ♪」
「ん?俺には可愛い本命がいるから受け取らないって言えばいいだけだろ?
あぁ…平助からのチョコは俺のモンだからな…」
どうやら機嫌が直ったようだ。
「心配しなくても左之さんの分しか用意しねぇよ。
…別にチョコ貰ってくんなとか言わねぇから。その代わり……左之さんちまで届けに来ていい?」
「当たり前だろーが?お前のチョコは、一欠片すら誰にも渡さねーっつーの…………ん?直接持ってくるのか?」
額をコツンと合わせながら、消え入りそうな声で、珍しく平助が我が儘を言った。
それだけ我慢させてるんだろうな…と、胸が痛む。
「じゃあ…15日から泊まりで来るか?」
おそらく予期しない言葉だったのだろう。
「学校で渡すの恥ずかしいし…でも泊まりでいいのか?……俺は嬉しいけど……左之さん忙しくない?」
嬉しさを滲ませながら…でも遠慮がちに聞いてくる。
「あぁ…泊まりで来いよ?平助ならいつでも大歓迎だぜ?
ん?平助が泊まりに来るのに、忙しいとか気にすんな。いざとなりゃ、新八に仕事押し付けてくるからよ…?」
平助の心配や不安が少しでも減る様に…
頭を撫で、おどけながら言葉を続けた。
「うわ〜左之さんひでぇ。
でも、新八っつぁん任せた…って任せて平気か?」
「いつもアイツには迷惑かけられてンだからよ?
だからお前と過ごす為の犠牲になって貰ってもバチは当たらねぇって」
普段から我慢している平助の為だ。この際、新八には貧乏くじを引いてもらう。
――――泊まりか。
なら………
ふと浮かんだ考えに、一瞬口角が上がる。
今年のバレンタインは、とびきり甘くしてやろう………。
―バレンタインまであと少し…―
(続)