誓いの光

□第1話:気弱な転校生ヒトミ
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森の木々に囲まれた建物。
その門の前に1人の少女が立っていた。



「ここが、レンジャースクール……」



少女の瞳には不安の光が溢れていた。
だが震える手を握り締め、俯き加減だった顔を上げる。
その瞳には今度は凛とした強さも宿っていた。



「頑張るって、決めたんだ……!」



不安はまだ消えていない。
それでも少女は真っ直ぐ前を見て歩き出す。
ともすれば止まりそうな足を必死で動かして……。










「なぁなぁ、今日転校生が来るって聞いた?」
「聞いた聞いた!男の子かな?女の子かな?」
「男の子だったらカッコいい人希望!」
「いやいや!やっぱここは可愛い女子だろ!」



アルミア地方に存在するレンジャースクール。
そこのあるクラスでは今日来る転校生の話題で持ちきりだった。
性別もわからない転校生の事を誰もが好き勝手に想像し盛り上がっている。
そんな中、その輪に加わらずただボーっと空を眺めている少年がいた。



「おい、ハジメ!聞いてんのかよ!」
「……んだよ、ダズル」



ハジメと呼ばれたその少年は面倒くさそうに声のした方を向く。
そこにはツンツンした赤髪のダズルという少年。
ダズルはハジメの反応に不満そうな顔をする。



「聞いてねーのかよー。だから、ハジメは転校生ってどんな奴だと思う?」

「知らね」



まさに即答、一刀両断。
一瞬で切り捨てたハジメは再びダズルから視線を逸らして外を見る。



「ちょ、一言はないだろ!」
「知らねぇものは知らねぇよ。どうせ後で来るんだからそん時見りゃ済む話だろ」
「そりゃそうだけどよー。お前、もうちょっとノリとかないわけ?」


「そんな事ハジメに期待するだけ無駄だろ」
「そうよ、そうよ」



ハジメとダズルの会話に突然入ってきたのは女の子の声。
その声の持ち主達は無視するとうるさい事を学習しているハジメは渋々振り返る。
そこには青色のショートヘアの女の子とふわふわな金髪を持つ女の子の二人がいた。



「アカリ、リズミ……。何か用かよ」
「ちょっと。用がなくちゃ話し掛けちゃいけないわけ?」
「そうだぞ、ハジメ!お前、そんな無愛想だと転校生と仲良くなれねーぞ!」
「じゃあお前はその言葉づかい直しとかねぇと男と間違われんじゃね?」
「なんだとーーー!!!」



「あっははは!!確かにアカリ今までに何度か男と間違われてたしな〜!」
「うっせぇ、ダズル!お前こそそのバカ直さねぇと転校生に相手にもされねぇぞ!」
「俺はバカじゃねぇよ!」
「ダズルがバカじゃなければ誰がバカなんだよ!」
「バカなのはアカリだろ!」
「あたしの筆記はダズルより良いっての!」
「だったら実技は俺のが上だ!」
「ただ運動バカなだけじゃねぇか!」
「それこそアカリもじゃねぇか!」




「どっちもバカだろ……」




延々と続きそうな口喧嘩を繰り広げるダズルとアカリ。
幸い(?)喧嘩に夢中な二人にはハジメの心底呆れたような呟きは届かなかった。



「相変わらず仲良しよねぇ、あの二人」
(こいつって……)



リズミはなぜか嬉しそうに喧嘩する二人を見てる。
だが理由が全く分からないというわけでもないハジメはあえて何も言わなかった。



「でもさぁ、転校生ってやっぱりレンジャー志望なのかしら?」
「知るか」
「もう。もしそうだとしたらあんた達にライバルが現れるのよ?少しは気にならないの?しかも、あんたと同じ転校生!」
「わからねぇもん考えたってしょうがねぇだろ」
「まぁそうだけど……、ってちょっといい加減にしなさい!」



リズミは何か言いかけたがダズルとアカリの喧嘩が流石に目に余り止めに行く。
ハジメはそれを興味なさげに見た後、窓の外を眺める。





「同じ転校生、ね……」





どんな思いでその一言を呟いたのか……。
呟きを拾ったものは誰もおらずその真意はわからない。
そこでこのクラスの担任であるアンリが入ってきた為全員が話を中断し席に着いた。



 
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