誓いの光

□第2話:クラスメイト達との対面
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アンリが教室を出て行くと生徒達は一気にヒトミの周りに集まってきた。
まず最初に口を開いたのはダズルだった。



「お前……、名前忘れちゃったけどピカチュウのキャプチャどんくらい時間かかった?1時間とか?」



ダズルはニヤニヤと笑いからかっているのは誰の目にも明らかだった。
しかしヒトミはそれに気付かず答えないと、と思いながらも何も言えなかった。
こんなにたくさんの人に囲まれる事がなかったとは言えないがそれは決して良い記憶ではなく……。



「ダズルって生意気だから構わない方が良いよ。」



ダズルを押し退けてヒトミの前に立ったのはリズミだった。
リズミは優しそうな笑顔を浮かべてヒトミに話し掛ける。



「それよりも私の事聞いて。あのね、私レンジャーじゃなくてオペレータを目指してるの。
ダズルがレンジャーになったらこき使ってやる為に! なーんてね!」



その場にいた者は何か冗談ではないような本気が感じ取れた気がするが生憎ヒトミは全く気付かなかった。
すると今度は知らない青色の髪の女の子が現れた。



「ヤッホ!あたしはアカリ!あたしもお前と同じでレンジャー志望なんだ!よろしくな!」



リズミを温かい笑みと称するならアカリは爽やかな笑みと言えるだろう。
活発で明るいアカリは自分とは正反対だとヒトミは思った。
すると3人のやり取りをきっかけにしてか他の生徒達もヒトミに質問し始める。




「テストの時、キャプス先生変なお芝居してなかった?」
「よその地方から1人でアルミア地方に?それってすごーい!」
「ポケモンレンジャー目指すきっかけって何?」
「ここはわりと自由なスクールなのよね。図書室や職員室も覗いてみると良いよ」




答える暇もない質問攻め。
ヒトミはどうしたら良いかわからず俯く。
段々と手や足が震えてくる。



(ど、どうしよう……。何か、言わなきゃ……)



しかしヒトミの様子に周りは全く気付かない。
並べられる言葉は増えていくだけで何一つ返せないでいるヒトミは目に涙が浮かんでくる。
すると……。





「人の隣でゴチャゴチャうっせーぞ!!てめぇら!!」





ハジメの声が教室に響き静まり返る。
何人か呆然としていたが中には負けじと言い返す者もいた。



「そ、そんな言い方しなくても良いじゃない!」
「そうよ!仲良くなろうと話し掛けてるだけなのに!」
「一方的にぎゃあぎゃあ騒ぎてぇなら他のとこ行きゃあ良いだろ」
「もう、そこまで!いい加減にしなさい!」



リズミの声にまた場は静まり返った。
更にアカリも続いて周り宥める。



「まぁ、気持ちはわかるけど程々にしようぜ。初日で緊張しまくってるわけだし」
「そりゃそうだろうけど……」



他の生徒達もなんとか納得しヒトミは質問攻めから解放された。
するとリズミがヒトミの手を取り立たせた。



「それではスクールのご案内させて頂きまーす!さ、行きましょ」
「行ってらっしゃ〜い」



そこでヒトミは先程アンリがリズミに案内を頼んでいた事を思い出した。
ヒトミはリズミに連れられアカリの見送りを受けながら教室を出た。




「………」
「……っ!」




教室を出る際、ヒトミは一度も見なかったハジメの方を見た。
その時、目が合ってしまいヒトミは咄嗟に目を逸らす。
そして助けられたのに何も言えなかった自分に嫌気が差した。




“ありがとう”




たったの5文字。
それでもヒトミにはそれさえ言えなかったのだ。



 
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