誓いの光

□第5話:ドキドキ!?肝試し(中編)
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階段を降りると目の前に広がる真っ暗な夜の校舎。
足がすくみ思わず立ち止まる。



(や、やっぱり怖い……!)



ヒトミは肝試しに来た事を激しく後悔する。
最も、断れなかった自分が悪いのだが。
ハジメは校舎の不気味さに怯む様子もなく進み始める。



「まずは俺らの教室行くか」



歩き出したハジメをヒトミは慌てて追いかける。
というより戻る事も1人になる事も出来ず追いかけるしかないのだが。
その時、横の窓が揺れる音が響く。




「〜〜〜!?」
「うわっ!」




その音に一気に頭は真っ白になる。
そして思わず目の前のハジメの背中に飛び込む様にしがみつく。
ハジメは突然の衝撃に倒れそうになるがなんとか耐える。
怒鳴って引き剥がそうとしたがヒトミの震えに気付きあげようとした声を抑える。



(ったく、怖ぇなら最初から拒否しとけよな……)



転校初日で1日中ビクビクしていたヒトミ。
怖がりだというのはその様子を見てれば明らかだった。
多分リズミ達はヒトミが少しでも早く皆に馴染む様にと考えての事だろう。
だがこれは完全に逆効果だったのではないか。
普段なら鋭くよく気が付くリズミはたまに起こる暴走状態が運悪く重なった様で気付く様子はなかった。
そしてヒトミは断る事が出来ず今に至る事となったのだ。
面倒臭いとハジメは心底思うが背中から伝わる震えが振り払う事を躊躇させる。
たっぷり時間をおき怒鳴り声を深いため息に変え吐き出した。




「おい、別になんもいねぇよ」
「………!?」



その言葉にヒトミは一瞬身体を跳ねさせ離れる。
顔は真っ赤で目を泳がせ口を開いては閉じて分かりやすいくらいに慌てている。
ハジメはそんなヒトミにチラッと視線を向けるとまたため息を吐きそのまま教室へと足を進める。




「行くぞ」




その一言で無視されたわけではないとヒトミは少しホッとする。
呆れられはしただろうがまだ嫌われてはいないと思う。



(大丈夫、まだ大丈夫……)



心の中で自分に言い聞かせて少し気持ちを落ち着ける。
ヒトミにとってこれはただの肝試しではない。
怖がってばかりいてハジメに迷惑をかけ嫌われるわけにはいかないのだ。



「おい、置いてくぞ」
「っ!?」



見るとハジメと少し距離が開いている。
既に不機嫌そうなハジメの機嫌をこれ以上損ねられない。
真っ暗な周りの風景を出来るだけ意識から外しヒトミはハジメの後を追いかけた。



 
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