異恋遊戯小説〜シェア彼〜
□〜こんな僕だけど〜
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「あ…キヨ…
文太の呼び止めにも振り向かず、創一はリビングを出ていった
「…機嫌を害(そこ)ねたみたいだな
今まで傍観していた千尋は裕介にむかって試すような言い方をし
「え!?俺のせい!?
「お前以外に誰がいる?
その時の千尋は、何の感情も見せない冷たい目で静かに裕介を責めた
千尋の静かな怒りに“しまった”と思い返し垂れていると
「サクさん、コレ誰にあげるの?
「ん?それ?
確認の為か、文太は“あるもの”に視線を戻し、裕介に問い掛ける
裕介は文太の指差すものを目で追い、「あ〜」ともらすと得意気に語りだした
「それね、文太の為に作ったんだ
「俺に…?
「そ。文太、甘いもの好きじゃん?でも糖分って脂肪になりやすいっていうから、甘さ控えめの…
ーガタッー
「「「 !!?
音のしたほうを見ると、そこには、つい今しがたリビングを出ていったはずの創一が立っていた
「あれ…創…ちゃん?なん…
「キヨ!
創一は裕介の問い掛けに応えず、文太の静止をも振り切り、その勢いのまま四つ葉荘を飛び出していった
「良いタイミングで戻ってきたな
「感心してる場合じゃないから!
何の気兼ねなくそう言った千尋に裕介は一督し
「サクさん、追い掛けないの?
「言われなくても行くって!
文太は創一の出ていった方向に指差しながら裕介に問うと、裕介は着ていたエプロンを脱ぎ捨て走りだそうとした
「あ、そうそう文太
「なに?
裕介はリビングのドアに差し掛かったところで振り返り
「それ、帰ったら感想聞かせてね♪
片目を閉じ、悪戯っ子のような意味深の笑みを浮かべながら言って創一を追い掛けていった
「なんか…食べたくない…
「そうだな。その方が無難かもしれない
裕介の意味あり気な言葉に何かを察したのか、文太は出しかけた手を引っ込め、
千尋は興味なさそうに返事をすると、自分の部屋へと行ってしまった
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
イライラが止まらない
胸クソ悪い
たかが相手が違うだけなのに
自分以外の誰かに対して何かをすることが許せない
文太だろうと翔吉だろうと、
カズ兄だろうと…
「こんなんだから、駄目なんじゃねぇか…
四つ葉荘から少し離れたところまで来ると、歩調をゆるめコンクリートの塀にもたれかかる
「はぁ…何やってんだ俺…
時間が経つにつれ、頭に血が上っていたのが冷めていき、冷静に思い返すと、自分がしたことに対し自己嫌悪に陥る
あの場にいた誰もが何も悪くない
ただの自分勝手の嫉妬心が生み出し、一方的に荒げたこと
頭の隅では分かってはいるものの、引き返そうにも引き返せず行くあてもなく歩きだそうと足を踏みだしたとき
「 創一!!
その声に振り返るとそこには普段とは違う男らしい声と表情で息を切らし、額に汗を滲ませながら追い掛けてきてくれたのは
謝りたいと思いつつも、今はなるべく会いたくはなかった彼だった