異恋遊戯小説〜修恋〜

□〜距離〜 健人と康人の場合
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


広いグラウンドには、主に野球部が利用している


俺の所属しているサッカー部は時々半面使わせてもらってるけど、サッカー部専用のグラウンドが別にあり、そこで練習をしている


けど俺は試合が近づく他はあまり行かない


少しでもヤスの近くに居たいし、見ていたいから



そんな日々を過ごしている俺は今日も練習には行かず、指定位置のここ、屋上でヤスの練習姿を観ている



ーもう定位置になってんだよなぁ…ここからの方が良く見えるし…ー



校舎はグラウンドに沿ってイニシャルのEの字に建ててある



砂埃で授業に専念出来ないだろうからと言って、グラウンドから教室を離した事からこの形になったらしい


で、俺が今居る所は出っ張りがあるところ(E←)の真ん中


そこの方が近すぎず離れすぎずで角度もイイんだよな


理由は単純


あまり近すぎると、観ているところを周りやヤスに気付かれる恐れがあるから



所属してるサッカーを休んででも観に来るとか、女みたいと思われても仕方がない…


けど俺はヤスの事を考えていると、部活時間がもどかしいとさえ感じる



離れている時間が長ければ長いほどヤスが恋しい…



片割れだからとかそういうのじゃなくて



魂が叫んでる



だけど、一歩引いて歩く



俺にとってその一歩が遠く感じる



後ろめたさ



罪悪感…



それらが着実に積み重なり形となって距離となる



そして手が届かなくなったその時、




ーこの恋に終止符を打とうー




そう自分に誓った





それまでは…




ーバシンッー



小刻みの良い音が響き、その音を辿ると



「康人!今日はいつもより調子イイじゃないか!!」

「今日はなんか…自分でもそう思います!」





顔を防護するメットを外した新堂がヤスに話し掛けている


それに応えるかのようにヤスも笑顔で返す



ー相変わらず練習熱心な奴だな、ヤスはー


にしても…



「新堂の奴、ヤスに気安く触りすぎじゃねぇか!?監督だからって!あぶっ…!」



勢い余って、思わず身を乗り出しちまった…



ー…重傷だな…ー



「ヤス…早く彼女作れよ…」



悲痛にも似た呟きは、心まで染み入るような冷たい風に掻き消されていく…
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