異恋遊戯小説〜シェア彼〜

□〜こんな僕だけど〜
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バレンタインが近づくある日、裕介はふと考えた


ー文太がこのままお菓子を食べ続けたら太るんじゃ…?ー


心配ないと思う反面、軽く想像した文太の姿をかき消し、裕介は行動を起こしたのだったが…


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ーバレンタイン前日ー


「よし!カンペキ!あとはこれを…


裕介は“あるもの”をトレーから可愛らしく施されたプレゼント用の箱に移していると、たまたまキッチンの前を通り過ぎようとしていた創一が近づいてきた


「なにやってんですか?桜庭さん

「うわっ!


裕介の肩越しから手元を覗き込もうとした創一を、裕介は勢い良く手で遮り“それ”を隠した


「……………


だが、創一は一瞬を見逃さず“それ”がなんなのか、すぐに理解した


(見て…ないよな?な?)

“あるもの”を見られたかもしれない不安にかられ焦りつつも冷静を装い、


「創ちゃん…出掛けるんじゃなかったっけ…?


普段通りに創一に話しかけるもいつもの笑顔は引きつり、とりあえず無難な話題を出したつもりだったが、創一にはそれが癇に触った


「俺がいつ何処に行こうが関係ないでしょ?それとも…


そこで言葉を区切り、意地悪な笑みを浮かべ


「俺に見られてまずいもんでもあるんですか?

「え!?あ…いや…ないけど…


しどろもどろに答える裕介を創一は横目で見やり、冷たく言い放つ


「…まあ、俺には関係のないことなんすけど。アンタが誰になに作ろうと


冷めた瞳で言うと創一は踵を返し、リビングから出ようとドアノブを掴もうとしたら


「朝から騒々しいな

「ちーちゃん
「千尋さん…


創一よりも先に千尋がドアを開け、リビングに入るなり珍しく感情が取れる声音で言うと


「なんかいい匂いがする…


千尋の後ろから今起きたと言わんばかりの表情を浮かべながら文太がある場所に向かう


「これ…


“あるもの”を見た文太は瞬く間に瞳を輝かせ、それをじぃ…と見つめる


「キヨ

「あ?

「これ、食べていいの?

「…何で俺に聞くんだよ?

「だって、サクさんが作ったんならキヨにじゃないの?

「…………


すぐ言い返すことが出来なかった


期待はしてたい


しかし、“あれ”を見られたときの裕介の動揺っぷりは尋常じゃなかった


もし自分に対してのものなら、あれ程のあからさまな隠しようはまずない


バレたとしても、おどけるか話すかのどちらかだ


そんな裕介が自分に隠し事をするということは…


「安心しろ


そこで言葉を切り、何か言いたげに裕介を見つめながらも思いを振り切るようにハッキリ言い切る


「俺にじゃねぇから


だが、どこか淋しそうな表情を浮かべながら創一はリビングを後にした
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