KiKi.

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目を覚ますと、教室は黄昏色に染まっていた。どうやら寝過ごしたらしい。
平日の一日というのは、どうも早く過ぎていくように感じて身体がついていかない。気が付いたら放課後になってるものだから、一日を無駄に過ごしてしまったように感じてしまう。
今日もボーっと過ごしていたら、気が付いたら寝てしまって、放課後になってしまった。

やっぱり、寝ちゃうのはまずかったかな。黒板を見たら、数学の課題を提出しておくようにと書いていた。提出日今日じゃん。

面倒だけど、出さないわけにはいかないので、課題を持って職員室に向かった。
正直、面倒くさいよ。課題もだけど、なんでテストなんてものがあるのかな。だって、勉強は出来ても人としてダメだったら、その人は偉い人間とは言えないんじゃないかな。
逆に、勉強は全然ダメだけど、みんなに親切な人は、人間としてダメなの。第一、あんな紙切れで人間の価値を測ろうということが間違いなんだよ。
定期テストの度に思うし、桜ちゃんに言ってみたことがある。「勉強しろ、馬鹿」と言われた。

なんてぶつくさ思いつつ、数学という呪文の羅列のプリントを提出した。よくわからなかったから、もう適当に解いた問題の数々だけど、提出したことに意味があるので関係ない。提出しない奴よりは、よっぽど優等生だよ。

課題も提出したし、さっさと帰ろう。携帯を開いてみたけど、桜ちゃんからの夕飯リクエストメールは来ていなかった。今夜はナポリタンにしようかな。ピーマンとベーコン買っていこう。

なんて夕食の献立を考える主婦みたいな思考を巡らせつつ教室に戻っていると、ふと寄り道でもしたくなってきた。だって、こんなにも学校に残っていたのは初めてで、赤い陽に染まる校舎が綺麗に思えた。すぐ帰るのはもったいない気がするから。
寄り道と言っても、校舎の中なんだけどね。もっと言えば、行こうと思っているのは一つだ。





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