KiKi.

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お姉は、あたしの記憶上、反抗期はあったはずだ。髪を金髪にして、耳にピアスホールを空けて…とまではいかないけど、父さんと母さんにピリピリしていた気がする。それも、短い期間で終わったけれども。両親はお姉のソレがあったから、あたしの反抗期事態をねじ伏せにかかったんじゃないかって、今になって思っている。

両親に本心を話したことなんて、あんまり無い。そりゃ進路とかの重大なことは話し合いはするけど、本当に言いたいことは結局言えないんだ。当り障りなく将来を語って、心の中では口とは違う将来を夢見てる。

なんだろうね、自分でも悲しくなるんだ。思ってもいないことを話してるんだから誰もあたしのことをわからないのは当たり前なのに、世界であたしの理解してくれる人なんていないんだって勝手に悲劇のヒロインぶる。気持ち悪くて大嫌いだ。

これは学校でも同じ。嫌いな奴にも笑って話せるから、上辺だけの友達は多い。友達というか、普通のクラスメイトだけど。相手から見てあたしが普通の人に見えていたら、それでいいんだ。
八方美人、器用貧乏。って言えば聞こえはいいけど、要はハブかれるのが怖いだけ。

「菊野ちゃん、これ面白かったよ。最後のさ、どんでん返しが予想つかなかった」

朝のHR前、そう言って手渡される本は、あたしが先週くらいに貸した本。手渡してくるのは、いつも一緒にいる子達の一人で葉島ちゃんだ。
手入れがされた黒髪は肩口で切りそろえられて、どこか学級委員な感じが拭えないけど、見た目ほど生真面目じゃない。ふざける時はふざけるし、ユーモア溢れる引きだしをたくさん持っている。本の趣味が合うから、一緒にいて楽しい子だ。
明朝体のタイトルロゴがされた青色の表紙のそれを受け取って、本の内容について話し始めれば、他の子も寄ってきてあたしの机を囲んで他愛ない話しを始める。
移動教室の時、お昼休みの時、短い休み時間、いつも一緒にいる友達三人。運動部やイマドキの子達みたいに恋だの芸能人だのの話しじゃなくて、どちらかというと地味な方にみられる本やイラストの話しをして盛り上がれる、学校の中で一番あたしが素になって向かい合っている人たち。

高校三年生の春、『青春真っ盛り』とか桜ちゃんは言うけど、青い春なんかじゃないよ、灰色だよ。

もし、あたしが水風船なら、割れた瞬間に弾け出すのは水の代わりに何なんだろう。溜めこんだ本音?桜ちゃんに対する想い?それとも、最初からあたしには何も詰まっていないのだろうか。



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