KiKi.

□02.
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紙の上に描かれた赤いキラサギを見ていたら悔しくて、目の前が霞んできた。視界がぼやけて、意地悪な化け狐が余計に不細工に見える。
なんで泣いてるんだ、あたし。馬鹿みたいじゃないか。絵が上手く描けなくて泣くなんて、小学生だよ。
だけど、涙が簡単に止まってくれなくて、我慢しようとすると辛いから、思い切り泣くことにする。ティッシュを横に置いて、クッションを抱きしめて、

わんわん泣いた。涙だけじゃなくて、鼻水も垂れてくるからティッシュで拭く。泣いて泣いて、声が枯れてきたころにやっと落ち着いた。ティッシュで擦り過ぎた所為か、目の下と鼻の下が痛い。寝ていた弥生は、いつの間にかあたしの横にいた。

「弥生…お前は優しいね」

そっと弥生の柔らかな身体を抱きしめる。あたしがブラッシングしている弥生には、ノミなんかいないから、思う存分に温かい弥生を堪能した。

「優しいのは、弥生だけじゃないだろ」

隣で声がしたと思ったら、桜ちゃんがココアが入った白いマグカップをくれた。それから、青いペンで、あたしが描いた不細工なキサラギの横にお菊を描いてくれた。
不細工なキサラギと、本人画のお菊。

「なんか知らんけど、友達と喧嘩したんなら、ちゃんと仲直りしろよ」

大人ぶって説教する桜ちゃんは好きじゃないけど、あたしは素直に頷いた。






次の日、美代ちゃんに「昨日はごめん」と言って、あの落書きをあげた。それから、ヤマザクラはあたしの叔父さんで、桜ちゃんって言うことを教えた。
美代ちゃんがびっくりしていたけど、不細工なキラサギと本人画のお菊を見て笑ってくれた。

「驚いたけど、教えてくれてありがとう。あたしね、お菊が好きなの。ちょっと、湯本ちゃんに似てるからかな」

お菊と、あたし。
モデルではあるけど、似てるとは思わなかった。でも、美代ちゃんに言われるなら気にしない。

「あたしね、「お菊物語」は好きじゃないけど、キサラギは好きだよ」

美代ちゃんに似てるからかな。その日は、四人で笑ってお昼を食べた。






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