utapuri

□消えかけたキミの体温
1ページ/1ページ







いなくなんないで、
ずっと、側にいて。







嫌いだった。
やけに突っかかってくるし、
俺のいやがることしかしねぇし。
でもいつからだろうか。
アイツが、
砂月が


消えてしまうことに哀しく思うようになったのは。





「ー…、なつきー、」


風呂から出た俺は次に入れと那月に言うために、名前を呼ぶ。


「おい、でたぞ」



そういって那月に近付くと


「…。」

「さつき?」

砂月だった。

「風呂、入れ」




「…チビ」

珍しく砂月は弱々しい姿で、
眉をひそめながら言った。



「これ、那月に渡せ」

「…え?」





砂月が差し出したのは
那月へと書いてある手紙だった。




「な、んで…?」

「おれは、もう消えるだろうからな。」



ぼたぼた

「や、だ、やだ、さつ、きぃ、…消えんなよ…。」

「…。」

「きえ、ないで…っ」

「何言ってんだ、くそチビ。そんなこと言ってると俺が消えられねぇだろ。」





ぎゅう

砂月が俺を抱きしめる。
すごく優しかった。




「消えたく、ねぇな」


「ぇ?」

「やっと、那月以外の光を見つけたのに」


「さつ、き…」




好きさえも口にできない俺等は、

弱い生き物だ。








消えかかったキミの体温
(どうか、この時だけは時間を止めて。)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ