kurobasu

□赤司くんといっしょ!
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思えば出会った頃からずっと好きだった。 想いはとどまることを知らずに溢れて、パンク してしまったようだ。醜い、汚らわしい感情ば かりが奥から奥からとどんどん溢れだす。 僕の手で君を仕留めることができるのなら。 僕は君に何をしてしまうか、自分がわからなく なって、恐くなる。大好きな君を…この手で殺 してしまうんじゃないのか。いつかは…きっ と。 君は優しいから絶対に止めないのだろう。僕の 好きにしろ、と言うのだろう。 ただただ君を独り占めしたい。でも僕は所詮ま だ高校生のガキだ。 だから君に追い付くまで、君に会わないよう に…。

「テツナ…」

この好きをどうすればいいんだろうか。





中学をやっと卒業し、そして高校生になった。 バスケの強豪校にしたのだが、京都、というす こし遠い場所にしてしまったのは後悔してい た。想い人、黒子テツナに会えないからだ。 会えないぶん、東京に行くときは必ずテツナに 会いに行く。 今日もそうなんだけど…。

「ー…テツナ、そいつ、だれ」

テツナの部屋に黒めの赤髪のいかつい、変な眉 毛の男がいた。

「あ、征十郎くんははじめてでしたっけ。こち ら火神くんです。高校時代の私の同級生でよく 食べ物もってきてくれるんですよ。」

「…そうか」

火神、と呼ばれるおそらく190はあるであろう やつを睨み付ける。 するとテツナが焦ったように火神にいった。

「ご、ごめんなさい火神くん…あの、この子赤 司征十郎くんっていうんですけど、ちょっと人 見知りで…」

「あ?別に気にしてねーから大丈夫だぜ」

そう言ってテツナの頭を触ろうとした火神に触 らせまい、とハサミを突き刺す。

「テツナに触るな。汚い菌がうつるだろう」

「なっ!!」

「僕に逆らうやつは親でも殺す」

「こら、征十郎くんだめでしょう、征華さんも 喜ばれませんよ!そんなこと言ったら…」

「…うん、わかったよ。ー…テツナに免じて許 してやるバ火神」

「ば、ばかがみ!?」

「…征十郎くん、初対面の人には?」

「…敬語ですね、テツナさん」

「…俺、帰るわ…」

「なんだかすみません…あ、お夕飯ありがとう ございました。」

「おう、気にすんな」

ぽん、とテツナの頭を触ろうするーがしかし僕 を見て止めた。そんなヤツに一言、思いっきり 作った笑顔で告げる。

「マタオアイデキタラウレシイデスネ、火神サ ン」

「ー…おう、お前、あんまり黒子困らせんな よ?こいつだって結婚しなくちゃいけないんだ からな」

「…黙れ」

「はいはい、じゃあな、黒子」

「はい、また今度」



「じゃあ征十郎くん、頂いたご飯一緒に食べま しょうか」

「…あぁ」

テツナが僕以外のやつと結婚する、なんて絶対 許せない。中学の時よりガキっぽくなったって 、テツナだけは譲れない。 好きで好きで大好きなのに。 その十分の一だって伝わらない。

「テツナの湯豆腐食べたい」

「わかりました、すこし待っててくださいね」

にこりと笑うとテツナは僕の頭を撫でた。 完璧に子供扱いだ。前から思っていたんだけど 僕ってもしかしてずっと彼女の側にいるのにか かわらず、恋愛対象どころかこれっぽっちも男 として意識されてないんじゃないのか? それは落ち込む。いくら赤司家の次期当主でも それはかなり落ち込む。実は僕には婚約者がい る。まぁ同い年のちんちくりんだが。僕が18に なったら政略結婚させるつもりなのだろう。 それにはあと2年という短い時間しかない。 あと2年で僕がどんだけの地位にたてるか。 父を圧倒できたら政略結婚はなしになる。

「征十郎くん、できましたよー座ってくださ い」

こんなに近くにいるのに。

(僕にはお前が遠く感じるよ、テツナ)

そうだ、テツナの羽根をもぎ取ってしまえばい いんじゃないか?どこにも、僕以外のところに 行けないように、邪魔物を排除して。

「征十郎くん?」

でもテツナは悲しむんだろう。自分はいいから といって、自分の大切な人が巻き込まれるのを 一番にいやがるのだろう。 テツナを閉じ込めたいのは閉じ込めたいのだけ ど、彼女の悲しい顔はみたくない。

「湯豆腐食べないんですか?」

「あ、ごめん。今行くよ」

立ち上がってテツナに近寄る。

かわいいかわいい、僕のテツナ。 大好きだよ。テツナは僕のこと、好き?

「ー…征十郎くん?」

「なんだい?」

「泣いてますよ、」

ポタリ、ポタリと涙が頬を伝う。 大好きなのに、大好きなのに、君がいなくちゃ 僕は息することも困難なのに。どうして普通で いられるの。どうして僕ばっかりなの。どうし て、ねぇ、どうして?

「征十郎くんは泣き虫さんですね」

昔聞いたことのある言葉と同時に頭を撫でられ る。

「…るな、」

「はい?」

「僕に、触るな…!」

テツナの手を振り払った。こんなことはじめて だった。 そのまま部屋を出て、走り続けた。 うしろから悲しそうな、征十郎くんと呼ぶ声な んて聞こえないふりをして。




「出てきたのはいいものの…どこにも行けはし ないし…どうするか…」

東京は一年ぶりだが、この辺はあまり詳しくな い。バスケのコートでもあればいいんだけど。

「あれ、赤司っちじゃないスか」

「ー…涼太?何でここにいるんだい」

黄瀬涼太。女ホイホイのイケメンモデル(笑) 神奈川にいったはずのヤツが何でここに?

「仕事ッスよー赤司っち京都じゃなかったッス か?」

「あぁ、テツナのとこに遊びにきー…」 「え!?黒子っち!?」

ヤバイ、失敗した。これはめんどくさいことに なった。

「涼太ー…お前の勘違いだ。僕とここであった のは二人の秘密だ、いいな?」

「え?でも、俺黒子っちにあいたー…」

ハサミをシャキーンシャキーンとして、それを 涼太に見せ付けるようにする。

「い・い・な?」

「ははははいッス!!!!」

「それとちょうどいい、僕の相手をしろ。お前 ごときが僕の相手をできるんだ、喜べ。」

「は、はい…」

黄瀬で時間を潰して、もう暗くなってきたので 帰らないとヤバイな、と思い黄瀬に一方的に別 れを告げ、来た道を引き返した。 ここで道に迷う、なんてお決まりはなくテツナ のマンションに着いた。

(まったく泣いて逃げるなんて僕は子供か。た だの子供の独占欲じゃないか…)

「帰るのが気まずいな…」

がちゃ

「!」

「すぅ、すぅ」

玄関でテツナが寝息をたてていた。

「ー…え、と…テツナ、寝てるのか?」

「すぅ、すぅ…」

問いかけても返事をしないので姫抱きで持ち上 げる。

「ん、せ、じゅろ、く、ん…」

苦しそうにテツナが呟いた。夢でも見ているの だろうか。 リビングにつくとテツナが作った湯豆腐と火神 からもらった晩御飯が机の上に手をつけていな いまま置いてあった。

(ずっと僕を玄関で待ってるなんて。しかもな にも食べずに…)

「ごめんね、テツナ」

でもどうしても僕は君が逃げないように繋ぎ止 めたいんだ。君は僕にとっての光だから。僕を 見つけてくれたのは君だから。










君の羽根をもぎ取りたいんだ
(そうすれば、僕からもう逃げれないだろう?)





おまけ


次の朝起きると私はなにか暖かいものに包まれ ていた。

「ー…征十郎くん?」

「おはようテツナ」

「おはよう、ございます…あの、」

「なんだい?」

「征十郎くん、目の色が違いますよね。ずっと 聞こうと思ってたんですけど…」

「ー…あー、これかい?これはちょっと色々 あってね」

「いろいろとは?」

「…笑わないか?」

「はい」

「…オッドアイ、ちょっとかっこいいだろ?だ から片目だけカラコンをいれてー…」 「ぷ、ふふ、」

「…テツナ、笑わないっていったよね?」

「すみません…か、かわいくて…ふふ、」

「…かわいいなんて言わせないよ。僕だって男 なんだからかっこいいがいい。」

「ぷふ、か、かっこいいですよ、征十郎くん は」

「…その言葉、覚えておけ。卒業したらかわい いなんていわせないからなバカテツナ」



つづく
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