kurobasu

□赤司くんといっしょ!
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「おい、おまえ。僕のに軽々しく触らないでく れないか?というかその汚ならしい菌まみれの 手で白くて純粋で綺麗なテツナの肌に触るな。 できればそう、血が出るくらい手をこすって 洗ってきなよ。そしたら触らせてやる。まぁ血 まみれになるからどっちにしろ触らせないけど ね。っていうかおまえみたいな汚いやつには触 らせないけど。ていうかなにさっきの口説き文 句。“君より美しいひとをぼくは見たことがあ りません。ぜひよろしければこの僕と付き合っ てくださいませんか?”確かにテツナは綺麗 だ。でも寒いよ。テツナもドン引きだったし、 なによりお前が地位、容姿で僕に勝てるのか な?とんだ勘違い野郎だね。青峰が言った俺に 勝てるのは俺だけだよりいたいよ。黄瀬が言っ た黒子っちくださいより気色が悪い。というか お前ごときにテツナが振り向くとでも思ったの か?勘違い乙だな。わかったらその汚いツラ整 形してから出直してこい。まさか分かってるだ ろうね?僕の言うことは絶対だ。そして僕に逆 らうやつは親でも殺す、以上。」

「ひ、ひぃ!!」

…どうしてこんなことになった(真顔)




れから三年。征十郎くんは高校を卒業した。 私はあれから征十郎には会っていなかったので 少しだけ彼のことが気になっていた。 なにかあったのでは…とか涙の理由とか。 結局何一つ聞けずに帰ってしまい、もう三年 たってしまった。

「…はぁ」

ガチャリ、とポストをひらくとひとつの手紙が 入っていた。

「…?、…!」

手紙を開くと、中には一枚の紙が入っていた。

「…赤司家婚約パーティー…?…え、征十郎く ん結婚するんですか…?」

赤司家は高校を卒業すると同時に婚約のパー ティーを行う。

「そ、ですか…おめでたいですね。相手は大富 豪の娘ですしね…すごくかわいいらしいです し…」

ぽつり、ぽつりと呟くことばはなぜか良かっ た、となんか思わなくて、少しだけ切ない。

「…なんででしょうか」

弟のようにかわいい征十郎くんが結婚するん だ。喜ばなくちゃいけないのに。

「…なんで、こんなに」

息がつまるのだろうか。

君がいない世界がこんなに薄汚れているなんて私は気づかなかった。

テツナさん! テツナ?

そういって私に近づいてくる君が、一番地近く にいたはずの君が今じゃ誰よりも、何処よりも 遠く感じるなんて。 (君は、私の手が届かないところにいってし まったんですね、征十郎くん) 可愛らしい、とても愛らしい少女が凛々しい、 たくましい青年の腕に自分の腕を絡めている。 黒のドレスに白のタキシード。どうみてもお似 合いだ。

「お暇ですか、お嬢さん」

「いえ、私はバニラシェイク以外は食さな… て、え?たしか君は黄瀬くん、でしたよね?」

「ひさしぶり。よく覚えてたっすね、黒子っ ち。あ、なんでいるのって顔してますよ?キセ キの世代は呼ばれたんすよ、婚約パーティー に」

「へーそうなんですか、」

「もー相変わらず冷たいっすーそこもいいけ ど。あ、俺、モデルやってるんす。最近はアイ ドル化してるんすけど…歌とか演技とか。」

「テレビにでているんですか、すごいですね。 黄瀬くんはかっこ良くて身長高いですからね。 」

「そ、そそそそそんな、とととととととととん でもないっす!」

顔を真っ赤にしてる黄瀬くんはどこか子供で見 かけはきまっているのにな、と思わず笑ってし まった。

「黒子っちも白のドレスに似合ってるっす」

「そうですか?どうも」

「髪も、のばしてるんすね」

「はい。なんとなく」

「すごく、綺麗っす…」

黄瀬くんが私の頬をさわろうとした瞬間ー

びゅんっ

と勢いよくハサミが黄瀬くんの綺麗な顔の横を 通った。というか投げつけられた。

「あ、あか、赤司っち…」

「?征十郎くんは十メートル以上離れているん ですよ?いくらなんでも無理ですよ」

黄瀬くんは赤いハサミのわっか部分についてあ る紙を取って見ると顔を真っ青にした。

「じゃ、じゃあ、くろこっち!また、また ね!」

「はぁ」

焦って転びそうになりながら私のもとから去っ ていく黄瀬くんを見て、大丈夫かな、と不安に なっていると

「黒子テツナ…」

「え、と、緑間くん、ですよね」

なぜか人事を尽くすと書いてある習字を持って いた。

「あれー赤ちんの保護者の黒ちーんおひさー」

と紫原が並んでいるデザートをむしゃむしゃと 食べていた。

「えーと紫原くん、どうもです。」

ぺこりとすると紫原くんはふわ、と笑って私に 近づいてきた。 すると片手に持っていたショートケーキを一口 大にフォークにさし、

「ん。黒ちんは赤ちんの特別だから、俺の特別 でもあるしあげるーあ、みどちんにはあげない よー」

「うるさいのだよ!まったく」

「あ、ありがとうございます…」

それからなんとなく他愛のない話をして二人は どこかにいってしまった。

(婚約パーティーに、友達をよんでいるんです か、征十郎くんは。)

昔じゃ考えられないことだ。喜びたいのだが婚 約パーティーということがただ心を痛める。

「…」

「あ!テツナさん!!」

呼ばれた方を振り向くと

「えーと、桃井さん…」

私より大人びた桃井さんと青峰くんがいた。

「赤司の保護者か。ひさしぶりだな」

「はい、お久しぶりです。」

「えーとほんとに三十路?」 「…ほんとに三十か?」

「はい」

ふたりはパッと目を合わせて

「おい、さつき。おまえのがフケてるようにみ えるぞ」

「し、失礼な!…事実だからなにも言えないけ ど」

「青峰くん。だめですよ。桃井さんは女性で す。そんなこと言ったら嫌われますよ。」

「テツナさん…!テツちゃんって呼んでもい い!?」

「おれはテツで。」

「はぁ、お好きにどうぞ。」

そして二人とも話終わってお手洗いに向かっ た。



鏡を見て髪の毛を整える。少しだけした化粧は 童顔を少しだけおさえてくれた。

(結婚、ですか。そろそろしないとまずいかも しれませんね。弟離れー…征十郎くん離れでき るいい機会ですし、それに)

あの約束は、彼が破ってしまった。

「私より先に結婚してどうするんですか…」

というか、何て私はばかだったのだろう。彼が 私より先に結婚して、子供をつくって、幸せに 暮らすことなんて赤司家では当たり前なのに。

「ほんと、だめですね…」

年を取ったせいか涙腺がゆるんだようだ。 ポタポタとこぼれ落ちる涙を止めることができ ない。

「…ふ、く、」

耐えろ、今は耐えろ。耐えなくちゃ彼にばれて しまう。やっと、今気づいたこの気持ちが。鋭 い彼にはいとも簡単にばれてしまう。

「…」

持ってきたハンカチで涙をふく。そしてから顔 を洗ったから少しだけした化粧はおちてしまっ た。 グロスとマスカラだけするとお手洗いをあとに する。 コツ、コツとヒールの音が廊下に響く。

がちゃり、とあけて中にはいるとみんなご飯を 食べていた。

「…やっぱり帰りましょうかね」

くるりと後ろを向いた瞬間に、誰かに肩をトン トンとたたかれた。

「?」

「もしよろしければご一緒してよろしいです か?」

二十代半ばくらいの男が私に話しかけてきた。

「はぁ、」

「君より美しいひとをぼくは見たことがありま せん。ぜひよろしければこの僕と付き合ってく ださいませんか?」

「ー…いきなり出会った人にそんなこといわれ ても。それにー…」 「ねぇ」

気づくと誰かの腕に肩を寄せられていた。

「誰のものだと、思っているんだ?」

征十郎くんだった。 逃げようとする男に追い討ちをかけるように彼 は言葉をつらつらと言ってのけた。




そして冒頭に戻る。

私がぽかん、としていると征十郎くんはにこり と笑って

「ひさしぶりだね、テツナ。挨拶しに来てくれ ないなんてひどいじゃないか。」

「はぁ、婚約おめでとうございます。とても可 愛らしい婚約者ですね」

「そうだね、すごく可憐だ。」

「では、わたしはお先に失礼します。」

笑ってそう言う征十郎くんに少し胸がいたんで 帰ろうとしたそのとき。

「はな。」

「なんですか、征十郎さま」

「申し訳ございません。この婚約、なしにして いただいてよろしいでしょうか」

「…かしこまりました。征十郎さまには想い人 がいらっしゃるのですね」

「ー…というかあなたも断るつもりだったんで しょう?」

後ろで驚くべき会話を平然とした顔でやり取り をする二人に口がポカン、とあいてしまった。

「では、僕は失礼します」

そういって私を引っ張る征十郎くんの力は強 かった。








大人になった君に
(すこしだけ、距離が埋まった気がします)





おまけ



その後のキセキたち。

「く、くろこっちぃーーー!」

「テツちゃんーーーーー!」

「泣くのではない。」

「みどちんも涙目だよーー?」

「うるさいのだよ!」

「…テツと赤司か。しあわせになるといーな」

「「「!?」」」



つづく
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