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□すきをおしえて?
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すき、それはわたしにとってただのきょうふにすぎない。















うまれてから、ずっとおとうさんがいない生活。

おかあさんと、おにいちゃんと、わたし。

わたしが3さいになったころには
もうしょおしか、いなかった。
おかあさんも、いなくなっちゃった。


『ゆい、おれがいるから、おれが、いる』

そういいながらわたしをぎゅーっとやさしくだきしめるしょおは、
いつもみたいにおにいちゃんっぽくなくて、
ただただなみだをこぼしていた。


『にい、ちゃ、…しょお、』

わたしもぎゅーっとしょおのシャツをつかむ。
しょおまで、きえていなくなってしまわぬように。




『しょお、しょおぉ』



ぼたぼたとながれるなみだ。
しょおのシャツにしみをつけて。








だからようちえんじといっても、
しょおいじょうにたいせつ、
しょおと同じくらいにたいせつなひとはできなくて。



『あ、ゆいちゃん、ぼく、ゆいちゃんがすきだよ!』

なんていわれても、

「…しょおが、いちばん」

ぜったいにそういった。


すき、
それは、きょうふ。
こわくて、こわくてしかたがない。


だれかをあいすと、ひとはよわくなる。


そうおかあさんがいっていたから。







「…、寝れねぇのか?唯」

さつきおにいちゃんがわたしのよこにくる。
いまはおひるねのじかんで、みんなねているのに、わたしはねれなかった。


「ねぇ、さつきおにいちゃん」


「なんだよ」



やさしくわらう、かれにぽつり、とつぶやいた。


















すきをおしえて?
(なんとなく、あなたならおしえてくれる気がした。)

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