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□俺に言うこと、ないか?
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溢れてしまいそうな感情が、弾けて飛んだ。
「…。」
今日の唯は翔や那月と戯れていた。
いつもはだれもいない砂月のところに行くのに。
でも今日は何かが違った。
「しょお、なちゅき」
「ん、どうした?」
「唯ちゃん、かわいい!」
「いっしょにおえかき、しよ」
「いいぜ。よーし!じゃあ俺は唯描くな!」
「じゃあ僕翔ちゃん描きます!唯ちゃんは僕を描いて?」
「うん。なちゅき、こういうのなんてゆうかしってる?」
「あ、両手に花ですね!両手にユリの花です!」
「ユリ?なんでユリなんだよ。ってか両手に花ってなんだ、花って。」
「ユリの花言葉は純潔!2人とも汚れを知らないって感じなので。」
「んだよ、それ」
「じゅんけつ?」
「綺麗で澄んでるってことだよ。」
「ふぇー」
なんて、のほほんと話している。
(唯のやつ…んだよ。)
なんでか気持ちがムズムズする。
「…。」
(なんでこんなに複雑な気持ちになんだよ…?)
「あ、砂月ー!砂月も絵描こうぜ!」
「さっちゃん!はやくー!」
「…。」
パッと目を背ける唯にイラッと感情が高ぶる。
だが砂月と唯は10歳以上はなれているし、砂月のが年上なのでしょうがない、と翔達がいる方向に足を向けた。
「砂月は唯の絵を描け!俺と勝負だ!」
無駄に意気込む翔を無視し、唯をちらりと一瞥すると
パチッ
目があった。
「…っ」
ふい、と顔を背け、那月を描き始めた唯。
「…、おい唯。」
「…さつきおにーちゃん…なに?」
「来い。」
「お、おい、唯、砂月!?てか、唯は女の子なんだから担いだりすんな!」
そう言って唯を担ぐと唯は大人しくしていた。
後ろで翔がなんか言っていたけど、そんなの関係ない。
「おい、唯。俺はな、お前と恋愛してやるって言おうと思ったんだけど」
「…え、さ、つき」
俺に言うこと、ない?
(好き、そう言え。そうしたらゆるしてやる。)