kurobasu

□君のこと。
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海のように深い人だった。
だった、なんて昔みたいだけど。
実際は一年前といった結構最近の話だ。
はにかむ笑顔も、照れ笑いも、意地悪に笑う姿さえ、どこか安心を与えてくれる。
大きな手はあたたかくて。
背中は大きくて。
やさしく、僕の目の上に被せた大きい手のひら。


ふわり、ふわり、
意識が遠くなっていたのに気づかなくて。
波にのみ込まれるかのように意識をはなす。




(ここは、何処でしょうか)


そこは一面が青い、深くて不思議な空間。

(なんだか青峰くんに包まれてるみたいで安心します…)

海のような場所で、途端に息が苦しくなる。

(息が、できない…)


こんな夢を前も見た。
三軍から昇格ができなかった時に、この場所と同じ場所で息が苦しくなったときに、誰かに思いっきり引っ張って助けてもらった。


でも今回は



沈んで、





しずんで。








(あ、ぁ、あおみね、くん)


君の大きい背中は
どこか寂しそうで。
君の大きな手は
なにかつかもうとしている、



君の笑顔は
ーーになった。








「ーろこ、黒子」


「、か、がみく、ん?」


目が覚めるとそこには現チームメイトの火神くんがいた。

「お前うなされてたぞ」


「ー…そうですか、ありがとうございます。」


すっと火神くんはどこかにいってしまった。






「ー…あれ、前もこんなこと、あった気が、…」


思い出した。

あれはまだ彼らの才能が開花していない頃だった。
練習後にくたばった僕はベンチで寝ていた。

そんなとき、たしかさっきみた夢をみた。
深い海にひとり。

みんな僕に気づかなくて

どんどん海から沖に上がってしまう。
一番始めに出ていったのは青峰くんだった。



(ー…あおみね、くん。おいてかないで、どこにいくんですか、ねぇ、)

「ーツ、テツ」


「ー…あおみね、くん?」

「うなされてたぞ。てかなに泣いてんだよ、」

光が入ってこないと思ったら、大きな手で目元がおおわれていた。
その大きな手は微かに濡れている。

「ー…ハンカチ持ってないんですか」

「女じゃねぇんだから持ってるわけねーだろ。」

「黄瀬くんは持ってましたよ。その辺の女の子より女子力高いですよね。」


「少なくともさつきよりはたけーんじゃね?」

「桃井さんにいっちゃいますよ」


そういうとパッと青峰くんは手を離した。


ごしごし

「ちょ、いたいです」


「がまんしろ。」

そういってセーターで僕の目を擦る青峰くん。





「よし、帰るか」


にかっと笑う彼が僕はまぶしくて目を閉じた。



















君のこと。
ポツリ、ポツリと頬を伝った涙。

(だれよりも知ってるはずなのに、近すぎて見えてなかったのかもしれない)

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