kurobasu
□あなたのことが大好きでした。
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ふわふわと、だんだんと意識がはなれていく。
(あぁ、私、死ぬのかな。)
血が止まらなくて、男の子が傍でおねえちゃん、おねえちゃんと身体を揺らす。
(お願いだから揺らさないで…辛いのよ。)
頭では冷静にこんなこと言えるけれど、全然身体も口も動かなくて。色々なことを頭に思う。
あぁ、ごめんね。お母さん。もっとお母さんのお手伝い進んでやればよかったな。お父さん。反抗ばっかしちゃってごめんね。優樹。もっと優しくしとけばよかったな。ごめん、ごめん。
パッと頭に思い浮かんだのは
(黄瀬、くん)
わたしの好きな人。
キラキラしたサラサラな金髪にきれいなきめ細かい肌。猫目なきれいな黄色い瞳に長いまつげ。高い鼻に薄い唇。
かなり整った顔の彼はスタイルもよくて190近くある身長、足が長くて、あきらかに神は二物も三物も与える、というやつだ。
モデルもやっていて、女の子にすごく人気で。
そんな人をなぜ好きになったかというと
私が貧血で倒れかけたときに
「大丈夫ッスか?」
と支えてくれたのだ。
イケメンはやることもイケメンだ。
イケメンにそんなことをされたら誰だって惚れる。
私は幻覚を見てしまったのだろうか。その時、彼の背後には薔薇が咲き乱れていた。
「わたしのオスカル様…」
「へ?おすかるさま?」
某アニメの主人公が一目惚れした学園の王子様的存在、オスカル様というキャラを思い出してしまった。
(三次元も捨てたもんじゃないな…)
そうして意識を失った。
それだけじゃなくて、仕事があるはずなのにそれをわざわざ遅れて私を病院に送ってくれた。
そこにきゅんときた私はそれから彼の出ている雑誌をすべてかき集めた。
彼のことをもっと知りたい。ファンでもいいから、好きになってくれなくてもいいから。
彼に少しでも近づきたい。
「あ、キセリョだーかっこいー」
「中学生でしょー?全然見えないよねー」
「バスケやってるらしいよー」
「試合見に行きたいね!」
きゃぴきゃぴと横でベラベラと話す女子高生を横目に私はすこしだけ自分のことのように嬉しくなった。本当に格好いい。
(あぁ、なんかいい思い出がいっぱいだな…死ぬ前に黄瀬くんの写真集、見たかったな…)
死ねる。そう思ったのに、
(ー…やだ、死にたくないよ、死にたくない。)
彼に会いたい。彼に伝えたい。彼に
そこで意識は途切れた。