utapuri

□陽のうた
1ページ/2ページ




決して叶うことのない恋。
きみに歌を捧げよう。






「おーとやー!」


早乙女学園。
ここはアイドル、作曲家を目指す養成所のようなもの。
二百もの倍率を勝ち上がった人たちが集まる。


そのなかでも誰もが目を引く、美少女
小傍唯。

この子は俺の『ともだち』



クラスは違うものの、最近は一緒に寮の前まで帰る。
早乙女学園は恋愛禁止の学校だが、俺らは『ともだち』だから大丈夫。
お互いたわいのない話をする。
唯はうれしそうに、クラスメイトの神宮寺レン、俺と同室の一ノ瀬トキヤの話をする。
唯は見かけは儚い美少女だが、性格は結構な男前だから、男子と仲いいし、モテる。


「でさ、そのときはるかと、ともが」

俺と同じクラスの女子とも仲がよい。
はるかとは七海、
ともとは渋谷のことだ。



俺も同じクラスのマサ、那月、同室のトキヤとかの話をする。


「でさぁ、那月が『唯ちゃんほんと可愛いですよねぇ』って。ほんと那月は唯のこと好きだよね。」

那月の話を始めると唯の顔が俯いた。



「唯?」


「那月、は、私のことなんて、好きじゃ、ない。」


ぽたぽた


「那月、はるかといると、ひだまりみたいだって」




唯の涙は止まらない。

「那月は唯のこと、大好きだよ!」

「…。」

「…そんなに辛いんなら俺にする?」




驚いている唯。

「ー…冗談だよ!…唯。俺ね、好きな子がいるんだ。その子とのハッピーソング、歌ってあげる。」


ギターを取り出し、近くにあるベンチに腰掛けると唯は俺の横に座った。


ギターを弾きながら歌を紡ぐ。

「〜♪」

唯も一緒に歌い出した。



「すごいよ、音也!いい曲!」

「ふへへ、唯誉めすぎだよ〜」

「その子との歌?」

「…そうだよ!」

「タイトルは?」

「陽のうた」

「いいっ!」

「もう帰ろっか」

「うん、じゃあ、また」


俺と別れた後、唯は泣きながら帰って行った。那月と七海のことを思いだしたのだろう。



(そんなに苦しいなら俺にすればいいのに。)






陽のうた
(ねえ、知ってる?陽って偽りって言う意味があるらしいよ。)
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ