utapuri

□万有引力な恋
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万有引力とは
物体が物体を引きつける力のこと




中庭を歩いていると
歌が聞こえた。
どこかで聞いてあるような声


「…、?」

綺麗な音色


「〜♪」






「あ、翔ちゃん」

「ー、那月?」

子鳥さんを集めて
歌っている翔ちゃんはなんだかすごく綺麗で、可愛らしくて。



「なんか、前にもこんなこと、ありましたよね。」

「あー、あったかもな」

「あの時はなぜか初対面なのに翔ちゃん怒ってました」


ぼそ
「…砂月のせいだよ」

「??翔ちゃん?」

「いや、なんでもねえ」


「あの時も翔ちゃんは可愛かったですぅ」












幼少時代でのヴァイオリンコンクールでの出来事。
那月は中庭で迷っていた。

『…どうしましょう…』

出番はあと少し。
でも方向音痴な那月は完璧コンクールに出ることをあきらめていた。

『うーん…』

考え込んでいると


『ー、〜♪』

『!…きれいなうた…』

その綺麗な歌に引きつけられるように那月は歩いていった。


『ー、ぁ』


そこには小鳥達を集めて楽しそうに歌っている美少年がいた。


『あの子、たしかー』

那月の次の番号の子だ。
普段はぜんぜんそんなの覚えないのになぜ那月が覚えているかというと

「やっぱりとてもかわいいです、」

かなりの可愛さだからだ。
クリクリな水色の瞳
さらさらな金髪
透き通るような白い肌
ピンク色の唇
筋の通った鼻
背も低くて


まるで

「おにんぎょうさん、みたいです…」

「!だれだ」

「ぁ、す、すみません。」

「ー!し、しのみや、なつき!」

なんでぼくの名前を知ってるんだろう、そう思ったときには


「ぜってー、まけねぇからな!」


そういって去っていった。
その後を何気なくついて行ったらちょうど出番になっていた。









「なんで翔ちゃん怒ってたんですかぁ?」

「そ、それは」




そのコンクールの前のコンクールのとき。


翔は眠るひとりの少年を起こそうとしていた。

『おい!おまえ!もうすぐ出番だぞ!』

すごく整っている顔。
将来こいつはイケメンになるんだろう、
そう考えていた。

『おーい!、おき』
ガバッ

『!?おきてるんならおきてるっていえよ!』
『おまえはおれにかてない』

そう言うとそいつは去っていった。

『ー!』
今思うとそれは那月ではなく砂月で
でもその時の翔はそんなことしらなかったから
せっかく親切心で起こしてやったのに、そんなこと言われて。





「…ねぇ、翔ちゃん」

「?」

「やっぱり、僕は惹かれているんです。」

「だれに?」

「翔ちゃんにです。」


「!!ば、ばか!早く戻るぞ!」

那月の手を握り、引っ張る。


「ふふ、翔ちゃん、手、繋いじゃいましたね。」

「うっせ!」

「どうせなら恋人繋ぎがいいなぁ」







万有引力な恋
(俺だって、おまえに惹かれてるんだよ)

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