utapuri

□甘えん坊わがままハニー
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わがまますら愛おしい、
それは可笑しいことだろうか?







「…。」


今日はゆっくりできる、そう思ってベットに座る。
作曲でもするか
とやることを決めてバックから楽譜をとろうとしたとき。




「さつき」



ぴっとりと背中に抱きついてくる。こいつは自分が可愛いということを自覚してない。だれこれかまわず笑顔を振りまくし人懐っこい。


「おい、はなせ」

「やだ」

ぎゅう

こんなの俺が知ってる来栖翔じゃない。わがまま言えなくて、恥ずかしがり屋でプライドが高くて。


「さつき、あまえ、させ、て…。」



そういって布越しに俺の洋服が濡れていく感触がした。



(いつもはツンケツンケしてんのに、コイツは何をそんなに怯えてやがる。那月じゃなくて俺に抱きついて。)



知らなかった。
コイツはこんなに弱い存在だなんて。
だっていつも意地を張って一生懸命一人でもできる、と頑張っているから。



(那月にはこんなこと、すんのか?)









「さつき、おれ」


いきなり何を言い出すのかと思えば、ちびは話し出した。






「おれ、さいしょは、さつき、きらいだった」


ぽつり、ぽつりと


「じぶんかって、だし、おうぼう、だし、ぼうぎゃくぶじん、だし、」

「好き勝手いってくれんじゃねぇか」

自分でも驚くほど優しすぎて甘すぎる声が部屋に響いた。
部屋には二人しかいないから声が反響する。



「でも、おれ、おまえを、」


すきになった。

消え入りそうな声で
抱きしめている力をもっと強くするかのように、


そういった。










「ばかか、お前は」



気付いたら砂月は言葉を発していた。

「お前は本当に馬鹿だ」


そういいながら泣きそうになっている顔を歪めているのは、砂月は知らない。




「泣くなよ、ちび」



「ばぁか、お前が泣いてんだよ。」

にへ、と笑うちび。



「なぁ、甘えろ」

「うん」

「那月じゃなくて、俺に精一杯甘えろ。」

「うん」

「わがままも言え。」

「うん」

「すきも俺だけに言え」


ビックリした顔のちび。

「他の意味の好きでも、那月にも誰にも言うな。」

「さつきは?さつきはおれにいってくれねぇの?」


「馬鹿か、てめぇ以外に言える奴いねぇよ。」

「…うん」

「お前は?」

「砂月だけ、だから。」

「あぁ」

「さつき、消えないで」



「…。」



震える声で俺にしがみつく。
「お願い、いなく、ならない、で」

「、俺だって消えたくねぇよ」




頬と洋服が濡れていく感触がした。








甘えん坊わがままハニー
(お前のわがままならなんでも叶えてやるよ。)

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