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□吐き出された言葉はなによりも残酷で
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好きになっちゃいけない人を

好きになった。













唯ちゃんは僕にとって、お姫様。

キラキラで可愛い
オシャレで強がりで負けず嫌いで
誰よりも曲がったことが嫌いで
面倒見が良くて
真っ直ぐな
女の子。





「唯ちゃん、」
「?どうしたの、薫。」

そう言って笑顔で僕に歩み寄る唯ちゃん。



「タオル一枚で出てこないでちゃんとパジャマ着て」


そんな魅力的な女の子がバスタオル一枚でお風呂から出てきたら、
いくら弟でも発情するに決まっている。

というか、僕は一度も唯ちゃんをお姉ちゃんと思ったことはない。




「べつにいいでしょ?へるもんじゃないもの。」

「良くないよ、どうするの。四ノ宮さんとか、来たら。」

あえて絶対
変態だろう人の
名前を出した。

一ノ瀬さんと聖川さんは絶対オクテだし、
意外に神宮寺さんと一十木さんもヘタレそう。


そのぶん、四ノ宮はきっと本能に忠実だろうから、わかんないし。

もう一人の人格になったとしても安心は出来ないだろう。







「那月?那月にはちょっと、なぁ」

何されるかわかんないし

そう言って唯ちゃんは着替えを取りに行く。



(何されるかわかんない、か)



唯ちゃんの思ってる“何”はきっとハグやほっぺにキス、それからお姫様抱っこのことだろう。


あんなに唯ちゃんを好きな人がいるのに。

あんなにわかりやすいのに。

それに気付いて
きっと気づいてない振りをしている。




ばたばた

唯ちゃんがパジャマを着て戻ってきた。







「ねぇ唯ちゃん。

僕は唯ちゃんの何?」

「へ?何言ってるの?決まってるじゃない。弟でしょ」


そう簡単に残酷な言葉を口にする。


やだ、やだよ




だって僕は唯ちゃんが、好きなのに。










吐き出された言葉は何よりも残酷で。
(僕にとってお姉ちゃんな唯ちゃんは、もういない。)
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