kurobasu

□初恋パレード
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地面に座り込み、擦りむけた膝からぽたぽたとコンクリートに落ちる血を見て、やっぱりブレーキに失敗したんだと痛感した。あまりの痛さに涙がぼたぼたと溢れだす。
膝はとても痛々しく、見ていられないくらいの重傷だ。



「大丈夫ですか」



上の方から澄んだ声が聞こえたので見上げると
制服、というものを着た女の人が立っていた。
水色の腰までの髪の毛にたれ目に髪の毛と同様、水色の瞳はとてもきれいで宝石のようだ。
筋の通った鼻に薄ピンクの唇。
華奢な体に可愛い、愛らしいという外見だろうか。




「男の子なんだから泣いちゃダメですよ」



そう言って俺の前にしゃがみこむと、白いブレザーのポケットから彼女のイメージにぴったりな淡い水色のハンカチを出して俺の膝に当てた。
きれいなハンカチが赤く染まっていくのを見てなんだか心苦しくなった。

そうしているうちに血は止まって、俺の涙を彼女が自分のブレザーの裾でふく。


「優しいんですね。」

その言葉に驚き、彼女を見ると、ふわり、と笑った。

「猫、猫を庇って自分が怪我するなんて。」

そうだ、思い出した。
俺は、いきなり飛び出してきた猫を引きそうになって急ブレーキしたんだけど、失敗してこの際…と思って他人の家の塀に自分の体をぶつけて膝からダイブしたんだ。
あの猫は…と周りをキョロキョロと見回して探すと


「にゃぁ」

黒猫がこちらをみていた。

「よ、よかった、」

なんだか安心して涙も止まった。
すると忘れかけていた膝の怪我を思い出した。
絆創膏を持っていないから血が止まったとはいえ、そのままにしておくわけにはいかない。
どうしよう、と考えていたら


「私の友人の家が、すぐ近くにあります。そこで消毒させていただきましょう。」


そう言って俺の膝に血まみれのハンカチを結んで、しゃがんだまま背を向けると

「乗ってください。その足じゃ、歩くのは辛いでしょう。」

「え、で、でも、お、おれ」

恥ずかしくてもじもじしていたら


「大丈夫です。身長が低くても小さい子の一人くらい、おんぶできますよ。」

恐る恐る彼女の背中に乗るとふわり、という浮遊感に襲われた。
少しだけいつもより高い視点。キラキラと輝いて見える水色の髪の毛。
シャンプーの臭いと、どこか甘い臭いがした。


「もう少しで着きます。」

どうやら腕がつかれてしまったのか、ぷるぷるとふるえている。


「あ、あのおねえちゃん、おれもうだいじょぶッスよ?」

「着きました。」

その友達の家に着くとピンポン、とインターホンを押す。

「うぃー、テツ?おい、お前すげー汗かいて…って、誰だその後ろのガキ。」

黒くて青くてこわい人が出てきた。

「膝を怪我してしまったみたいで。なのでちょっと救急箱をお貸しいただいてもよろしいですか?」

「べつにいーぜ。おら、そのガキこっちによこせ。お前疲れてんだろ。」


「…すみません、」

「ったく貧弱だよな、テツは。」

二人の会話に付き合ってるのかな、と疑問に思う。なぜか胸がツキン、となった。



「消毒しますよ」

「っ!!」

あまりの痛さに溢れそうになる涙をこらえる。

「せっかくのイケメンが台無しですよ。」

と瞼にキスを落とした。

どくん、どくん。
血が逆流しそうなほどに大きななにかを感じる。わかった、この気持ちは…




「はい。できました。歩けますか?送りしますよ」

膝に絆創膏をはって、立ち上がる彼女のすそを掴んで

「ありがとう、大丈夫ッス。一人で帰れるッス、」


そう言った。


玄関をでて、忘れ物をしたことに気付いた。


「おねえちゃん、なまえ!!何て言うんスかー!!」

一瞬だけ驚いた顔をしてふわり、と笑っていった。。

「黒子、テツナです。君は?」

「くろこっち…おれきせ、りょーたッス!!」

そう言って彼女に近づいて

「おれと、ケッコンしてください!」


「考えておきます。りょーたくん」


















1・初恋と笑顔。

キラキラと輝いてきれいに消えた。
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