kurobasu

□あなたのことが大好きでした。
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夢を見た。

「ひとつだけ、叶えてあげましょうか。君の願いを。」

色素の薄い水色の髪の青年が私に言った。


「あ、あの、黄瀬くんに、伝えたいの。わたしのこの想いを、」



そうわたしがいうと、彼はふわり、と微笑んで消えた。















パッと目が覚めるといつもと違う天井があった。


「ー…ふぁ、…え、わたしどうなってるの?」

死んだはずの自分が、生きてる?
まさかとおもい、洗面所に向かうと


そこには儚げな美少年が寝癖をつけまくってたっていた。

(ー…え?うそだ、もしかして…)


あの夢の青年?
あの夢は予知夢?


「ー…私はどうなったんだろう」


私はやっぱり死んでしまったのだろうか。
やっぱり、この世にはもういないのだろうか。

なんだか涙が溢れそうになった。
でも我慢してなおらない寝癖を水で濡らした。
部屋に戻って制服を着て、鞄を持ち、家を出た。お腹は好いていなかったが、コンビニでおにぎりを買った。あとは学校への行き方がわからないので同じ制服を着ている人たちの後に続いて歩く。


(しかし、この子ちょっと白すぎじゃないか?しかも細いし…美人だしー…いいな、これくらい美人だったら黄瀬くんとも…)

って彼は男の子だ。

しかもこの子と黄瀬くんが知り合いだなんて、そんな二次元みたいなことがあるわけー…


「くろこっちーーーーーーーーー!!!!!」


「ぐおうふ!!」

後ろから誰かに抱きつかれる。

「おはようッスーーてか黒子っちがすてきな悲鳴を!なかなか悲鳴なんて聞かないから新鮮ッスー!やったー!!」

(もしかしてー…いや、もしかしなくても…)

「き、黄瀬くん?」

「なんスか〜?今日も寝癖かわいいッス!!」

「はぁ、って、え?」

この儚げな美少年が黄瀬くんの友達?
この黒子っちって言うのは彼の名字?
この黒子っちって呼び方はもしかしなくても

「ー…仲良し?」

「はい?黒子っち今日ちょっと変じゃないッスか?表情筋が緩んでる??」

「ー…黄瀬くん、ちょっといい?」

「え、あ、はいー…」





彼の手を引っ張って木陰に行く。
気になって後ろをちらりと見ると彼の後ろには薔薇が咲き乱れていたー…
わけではなく。
小さな花をポンポンといっぱい飛ばしていた。

(黄瀬くんってもしかしてー)

この青年のことが、好きなのだろうか。
そうなら、かなり分かりやすい。
(そっか、黄瀬くん好きな人いるんだ。)
何でか胸が締め付けられる。
やっぱり恋してるんだ、わたし。
(黄瀬くんが好きな人ならきっといい人なんだろう。優しくて、人に気が使えてー…)

「く、黒子っち!?なんで泣いてるんスか?」

おろおろとしだす黄瀬くんはわたしを黒子っちと呼んだ。
愛しそうな優しい瞳でこの青年をみている。
わたしは今、この青年であって、そうではないんだ。
頬を伝う涙を必死にブレザーの袖で拭く。
でもとまらなくて、ゴシゴシと擦ったら手を捕まれた。


「目、赤くなっちゃうッスよ?」

と優しく彼が微笑むものだから余計に溢れ出るものを止められない。

「俺ハンカチ持ってるから使って?」

目元を優しくハンカチで拭かれてきゅんっとしてしまった。

ずるい。狡い。
もっと好きになっちゃうじゃない。

「わ、たし、あなたのすきな、くろこっちじゃ、ない、の」

その優しさも、笑顔も、
わたしに対するものじゃなく、彼に対するもので。

「え、どうゆうことッスか」

「わたし、このこに、のりうつってるゆーれい、なの、」

目を見開いて驚く彼。混乱しているようだ。
それでもわたしは続ける。

「わたし、きのうしんじゃったの、でも、どうしても、しにたく、なくて、かなえたい、ねがいが、あって、」

「ー…君は黒子っちじゃないんスか?」


「は、い」

「黒子っちじゃないってことと、幽霊ってこと。昨日命日だったこと、それと女の子っすね?」

「はい、」

「叶えたい願いがあるー…それって俺が関係ある感じッスか?」

こくり、と頭を縦に振ると黄瀬くんは少し考え事をしてからこちらを見てふわり、と笑った。

「じゃあ俺と一日過ごしましょ!!!」

「は?」

行きなりの予想外の展開に思わずポカンとしてしまう。

(黄瀬くんって、もしかしなくても…頭弱いのかな、?)

「そしたらその願い事も叶うはずッスよ!成仏できるはずッス!!」

「は、はぁ」

にこにこと笑顔の彼にほどかされてしまう。
(学校サボって大丈夫なのかな…)

すると、黄瀬くんはケータイをポケットから取り出していじる。
ピッぴとケータイのボタンを押す音が聞こえる。

「もしもーし、あーおみねっち♪はよーッス!!」

受話器から微かに低音イケメンボイスが聞こえてくる。

「申し訳ないんスけど今日俺と黒子っちデートするんで部活と学校休むッス!!俺らの担任に言っといてください」


『はぁ!?っざけんな!テツとデートとか殺ー…』

プツン
ツーツー


「じゃあいこっか」

にこりと笑う彼に手を引かれる。
先ほどのデレついた笑顔とは少しちがくて。
紳士的な笑顔に、あ、女の子慣れしてるなやっぱ。と思った。
女の子扱いに嬉しく思ったり思わなかったり。

(さっきの扱いのがよかった。特別って感じがして。)

でも特別なのはわたしじゃなくてこの青年。
この優しさは張り付けた、作られた優しさで。余計に彼を遠くに感じる。



「どこ行くッスか?ー…あ、名前!」

くるり、とこちらを向いて笑顔で尋ねる彼に思わず微笑む。

「別に黒子っちでいいよ」

「ダメッスよ!!俺が君の名前を呼びたいんス!!ね?」

「羽崎真琴です」

「真琴ちゃんっすね?どこいきたいッスか?まこっち!」

「ま、ま、まこ、まこっち!?」

「俺、尊敬する人に何々っちつけるんス!」

「は、はぁ」

「だからまこっち!まこっちのこといっぱい知りたいから質問に答えてくださいッス!!」

ニカッといたずらに笑う黄瀬くんは思い出したかのように言った。

「ーあ、ちょっと男同士で手繋いでるのはまずいッスかね…俺は別にいーんスけど、黒子っちがいやがりそうだなぁー…」

といってパッと手を離す。

「黄瀬くんと黒子っちくんは付き合ってるの?」

「付き合ってないッスよ、俺の片想いッス。」

イケメンも片想いするんだなぁと彼の横顔を見る。まあ、相手が同姓ならあるのかもしれない。でもこんなにイケメンだったら同姓でも好きになる可能性はあると思うけど。

「よーしじゃあデートするためにお着替えしましょっか。制服だとサボりだってなっちゃうから。今は黒子っちじゃなくてまこっちだからいっか。はい。手繋ご?」

「べ、別に手なんて繋がなくても…」

「俺が繋ぎたいんス」

ずるい。ほんとに狡い。そんな風に言われたらなにも言い返せなくなるじゃないか。

「あ、もしもしー俺っすけど…はい、はい、お願いッス♪」


「黄瀬くん?」

「今からマネージャー来てくれるッスからちょっとそこのベンチで座ってよっか」

「はぁ、」

近くのベンチに座ると黄瀬くんはわたしに質問を始めた。


「まこっちは、いくつッスか?」

「高校2年、かな」

「年上なんだ!!へーじゃあ好きな食べ物はー?」

「うーん特にないけど、甘党だからマジバのバニラシェイクがすきかなぁ」

「黒子っちも好きなんスよー同じッスね!!」

「黄瀬くんって黒子っちくんの話するときが一番輝いてるね」

「え、ほんとッスか!?恥ずかしいッスー」

「なんか好きがにじみ出てる」

「分かりやすいってよく言われるッス…」

「いいと思うよ。あ、わたし黄瀬くんと黒子っちくんのはじめて会ったエピソード聞きたいな」

「お、聞いちゃうッスか?俺今バスケ部なんスけどーその学校のエースに憧れて入ったんス!!その前はけっこー冷めてて、何やってもつまんないとしか思わなかったんス。けどその憧れの人のプレイがまた無茶苦茶なプレイで!!ゴールの裏からシュート決めちゃうような人でさー。そんな人に相棒がいるって聞いたんス。だから練習中にさがしたらそれがシュート間近からうって入らないようなやつで、なんだこいつ。ふざけるな、なんでこんなやつが青峰っちの相棒で、しかもレギュラーなんだって。あ、青峰っちって言うのは俺の憧れの人ッス!!で、試合に出ることになって。そいつに言ったんスよ。俺と勝負して俺が勝ったらそのユニフォームくれって。そしたら僕は脇役だーとかなんとか言っちゃって。逃げたと思ったらとんでもないプレイをするやつでさぁー、もうパスが半端じゃないんスよ!!ささっどんがっって。」

「つまりそれが黒子っちくんだったというわけね」

「そうなんスよ!!ね?それからはもう黒子っちに夢中になっちゃって。告白したんスけど冗談だと思われちゃってーやんなっちゃうッスよ、もう。黒子っちモテるし。」

「へー、大変なんだねイケメンも。イケメンはもっと楽に女の子タラシこんで生きてるかと思ってた」

「俺は黒子っち一筋ッス!!」

「はいはい」

しばらく話をしていると、一台の車が止まった。

「りょーたくん」

「あ、田中さん。ありがとうございます。」

「黒子くん、よね?」

「そーッス!!黒子っちッス!!黒子っち、こちらは俺のマネージャー兼スタイリストさんの田中さんッス」

「く、黒子です。よろしくお願いします」

「田中よ。…なるほど、儚げな美少年…」

「はい?」

「じゃ、いこっか」

「ど、どこに?」

「もちろん!ついてからのお楽しみッス♪」


「え、ちょ、黄瀬く、」

キキー
バタン


車のなかに押し込まれてポカンとすると

「あ、これ黒子くんの着替えねーはい」

と洋服を渡された。

「は、はぁー…っ!?ご、ごま!?」

「胡麻?胡麻食べたいんスか?」

「ち、ちがくて、ご、ごまんえんもするようふくなんてき、きれないよ、きせくん!」

「黒子っちに絶対似合う洋服ッスよ?来てくれなくちゃ俺、」

「あーわかった!わかったからそんなしょんぼりしないで!てか車広っ」

「あ、あっちのカーテンの裏で着替えてくださいッス」

「ー…わかった」


シャー

「なんてことだ」

庶民のわたしが、モデルの黄瀬涼太と話し、手を繋いだだけではなく、デートまですることになるなんて。
恐ろしい子、この美少年…!!

「ー…やっぱわたしじゃないんだ」

この体は、違う人のもので。
でも意思はわたし。

「着替え終わったッスかー?」

「う、え、あ、うん」

「開けるッスよー」

シャー


「?、黄瀬くん?」

カーテンを開けた瞬間に黄瀬くんの動きが止まった。口をポカーンと大きく開けているかおはなんともアホらしいが、イケメンはこんなシーンでさえ絵になる。
腹立つぜ、まったく。

と、わたしのキャラが見えなくなってきた頃に黄瀬くんが顔を真っ赤にした。

「くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくく」


「ー…何回言うの?く、って。」

壊れた人形のようにく、と連呼しまくる彼はばっとわたし(黒子っちくん)に抱きついてきた。

「くろこっちぃいかわいすぎッスよー!!」

勢いがあまりすぎたせいか、後ろに倒れる。

「あの、黄瀬くん。離して?」


「黒子っちの白いモッチリな肌によくあってるッス!華奢な体にはやっぱり黒がよかったッスね!!白と黒でモノクロな黒子っち最高ッス!!あーあーーーーーさすが田中さんッス、結婚しましょう!」

「ごめんねー黄瀬くん。わたし彼氏いるしそれに残念なイケメンホモデル(笑)と結婚はちょっと。」

「黄瀬くん、離してくるしい」

「あ、ごめんッス!ちょっとトイレによってもらえないッスか?あまりに似合いすぎて下の息子が元気に…」

「最低」
「最低」
「「最低」」

「うっ、だっだってぇ」

最低の三連続に黄瀬くんはダメージを受けたようだ。

(あぁ、なんでわたしこんな残念なイケメンホモデル(笑)好きになっちゃったのかな…)

わたしが好きになった彼はイケメン紳士な人だったし。
でもこの最低でキモいところを見てもまだ好きだなぁ、って感じるわたしは重症だと思う。

だいたい
こんな万年発情期な犬を野放しにして、この美少年の身は大丈夫なのか。

横に座る黄瀬くんに耳元で

「よく好きな人が目の前にいるのに、黄瀬くん襲わないね。」

と言う。

「だって黒子っちには、嫌われたくないッスから。」


ぜったい、彼には嫌われたくない。
そう瞳が訴えていた。

「ー…そっか、ならよかった。」

わたしが入る隙間はこれっぽっちも残ってない。

諦めがつく。
だから、よかった。


「え?」


まさか聞き返されるなんて思ってなかったので必死で笑って嘘をついた。


「もし黄瀬くんが本当に最低だったらそんなこと考えないだろうし。黒子っちくんは多分、ドン引きなんだろうけどね。」

「あの、なんだか意味がわからないッス…ただ一つだけわかるのは心がズタズタにされてるってことッスね…」


「りょーたくんも着替えたらー?」

「了解ッス」
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