kurobasu

□赤司くんといっしょ!
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数年後




泣き虫だった征十郎くんはもう中学生になった ようです。 あれから何回も征十郎くんはお父さんともめ、 そのたびに彼はひとりでこらえていたそうで す。 なぜ私がそれを知らないかというとあの日以 来、征十郎くんが私の家に来ていないからで す。でも手紙は交換していたので、いつも何が あったとか今日は楽しかったとか、色々なこと を教えてくれます。 中学生になった彼はどうやらバスケの強豪校に 入ったようです。そしてバスケを始めたようで す。仲間のことやチームのこと、バスケのこと をかいているところだけなんだかうきうきと楽 しそうに字が踊っています。 だんだん綺麗になっていく字をみると征華さん のことを思い出して、彼もあの人のように立派 で美しく、凛々しいひとになってくれるといい な、と考えます。





手紙を交換するようになって4年。

「ー…え?」

今日もいつものようにポストから手紙をとり、 マンションの階段を登りながら手紙を読んでい ると最後の行に

〔8月17日、テツナさんも僕のバスケを見に来 てよ。赤司家の本家の車が出迎えにいくから〕

とかいてあった。

「ー…拒否権はないんですか、こういうとこは お父さんに似たようですね」

口では嫌みっぽくなっても、顔はどこか笑顔 だった。

(征十郎くん…どんな風になってるんでしょう か…男前でしょうかね)

そんなことを考えているとふと、あの日彼が 言ったことを思い出した。

ーむかえにくるから、ぜったいけっこんしない でね?ー

「ー…結婚どころか、相手さえいませんよ」

一人の部屋にポツリと呟いた言葉がいやに響い た。





「お迎えに上がりました、テツナ様」

黒のベンツで迎えられる。

「はぁ、ありがとうございます…」

この日のために仕事を休みにさせてもらった。 ふつうの格好(パーカーTシャツジーパン)をして いたのにベンツのなかに高そうな洋服があり、 運転手のひとに「征十郎様がテツナ様のために 庶民のデパートに行って買ってこられたもので す。」と十着くらい渡された。 ふわふわのワンピースからスーツまで。 どれにしよう、と迷っていると手紙がまじって いた。それをあけて、読むと〔テツナさんは きっと迷ってるんだろうね。スーツはかたいか ら、でもこんなかわいいワンピース似合わない とか思ってるんだろうね。だから僕があらかじ め決めておいた服は座るとこの後ろにあるか ら。洋服は全部プレゼントだよ。着てね〕とか いてあった。

(さすが征十郎くんですね。赤司家の次期後継 者です。)

あのときの愛らしい、泣き虫で強がりなかわい いかわいい弟がいないのか、と思うとすこし寂 しくなったけど、こんなに立派に育ってくれた ならまぁいっか、と思った。

征十郎くんが選んだ服は肩でふわりと膨らむ、 黒のリボンが胸で結ばれている白いシャツに薄 い水色の膝上15センチくらいの白いフリルがつ いているスカート。そしてシャツの上に羽織る 紺色のカーディガン。靴は黒のヒールのあるサ ンダルだ。

「…私にプレゼントするくらいなら、好きな子 にプレゼントしたほうがいいとおもうのです が…」

だいたいこんな女のこーって感じのような服が 私に似合うのか。そう思って俯くと運転手さん がいった。

「大丈夫ですよ、すごくお似合いです。髪型は 編み込みで紺色のリボンのピンで止めていただ きたいと征十郎様がおっしゃっておりました。 編み込みは可能ですか?」

「い、一応できますけど…」

園児に結構人気だから、と頑張ってできるよう にした編み込みが、こんなところで役に立つと は。

「紺色のリボンのピンはカーディガンのポケッ トに入っています。」

ピンをつけて窓の外を見る。カップルや家族が こちらを見ている。すごい、とかながい、と か。 私も本来ならあちら側の人間なのに…。 そう思いながら車に揺られた。





「テツナ様、着きました、テツナ様」

「、ん…あれ、」

「着きましたよ」

「ありがとうございました…」

パタン、と運転手さんが車のドアを閉めた。

「ではいってらっしゃいませ」

とてとてと体育館へと足を進める。 がらり、と体育館の扉を開けると熱気が伝わっ てきた。むわぁーんとする。

「きゃーーー!黄瀬くんかっこいい!!!!」 「青峰くんのがいいよ!ワイルドだもん!」 「やっぱり緑間くんだよ!美人系だし!」 「えー紫原くんだって!可愛いし!妖精みた い!」 「やっぱり赤司様だよ!もう、キャプテンたま らない!」

「あか、赤司様…あ、赤司征十郎くんのことで しょうか…」

どうやら女子中生が征十郎くん?の話をしてい る女性に尋ねる。

「え、あ、はい…か、かわいい…」

「ありがとうございます…?あなた方のほうが かわいいですよ?」

そう言うと女の子たちはぼっと顔を赤くした。 ひょこりとのぞくとカラフルな頭が見える。 征十郎くんはたしか赤髪だったので赤、赤と探 すと、

キュッキュッ ダンッ

「お前らもう一本いくぞ!」

と声が聞こえた。

そちらを見ると

「せ、せいじゅうろう、くん…?」

整った顔の、赤髪の少年が視界に入った。

それからはボーッと彼を見つめて気づいたら試 合は終わっていた。 まさかあんな逞しくなるなんて。

「ー…帰りますかね」

別に会うと言う約束はないし、タクシーでも捕 まえて帰ろうとしたときー

「どこにいくの?テツナさん」

さっき体育館で聞いた「お前らもう一本いく ぞ!」という声に似た声が聞こえた。 穏やかなイケメンボイスだ。振り向いて彼を見 る。

「あ、あか、あかしさま…」

「赤司様ってなに?まったくテツナさんは面白 いね。征十郎でいいよ。俺もテツナって呼びた いし」

「征十郎くん…お久しぶりです。ずいぶん大 人っぽくなったもので。見まちがえました。」

「久しぶりだね。変わらないねテツナは。むし ろ幼くなった?」

にこりと笑う征十郎くんは私のすぐ近くに近づ いてくる。

「失礼ですね…泣き虫な、かわいかったあのこ ろの君はどこにいったんですか。」

「え、キャプテンって泣き虫だったんす か!?」

二人で話していたはずなのに征十郎くんのうし ろからサラサラな金髪のイケメンが現れた。

「お前ら…いつからいたんだ?」

征十郎くんはにっこりと笑顔で後ろを振り向く と今度は顔黒の青髪のワイルドが現れた。

「おい、黄瀬ぇ…マジざっけんな!」

すると今度は緑髪の下睫毛が長い、…木槌を 持っている美人と紫髪の巨人がお菓子をモグモ グと食べながら現れた。

「おいお前ら。キーキーうるさいのだよ」

「赤ちーんそのひとだーれー?」

「テツナ?テツナは俺の婚約者だ」 「違います。保護者です。」

思わずツッコミをいれると彼等は笑った。

「キャプテンの片想いッスか…」 「お前も片想いすんだな」 「意外なのだよ」 「赤ちんどんまーい」

「お前ら明日メニュー五倍だ」

えーとかマジかよーとか言ってる彼らと征十郎 くんを見て思わず笑みをこぼした。











泣き虫だった君は今
(信頼されてるひとになれてよかった。)





おまけ

その後のお話

「…テツナ、」

「テツナちゃんって言うんすか!わーかわい いっす!」

「え、あの、」

かわいいと言われておもわず元から無表情な顔 がもっと無表情になってしまった。

「あ、もしかして黄瀬のこと知らねーのか?」

「ー…黄瀬はモデルなんだよ」

「ー…へー」

たしかに。こんなにイケメンだったら世の中の 女の子は放っておけないだろう。

「反応うすっ!!!」

「すみません、そういうものに疎いもので。」

「お、おれ、女の子にこんな扱いされたことな いッス…この子、いい!、キャプテン!テツ ナっちください!!」

「黄瀬はメニュー十倍な」

「ふーんまぁ胸はねーけどな顔は…」

「失礼な中学生ですね。」

「…決めた、お前俺と付き合え」

「青峰は十五倍だ」

「…ずいぶんと子供みたいなのを好きになった な赤司」

「緑間は二十倍だな」

「ちょ、ま、別にかわいいとかいってないのだ よ!?」

「わぁーかわいーわたがしみたいだねーふわふ わー」

「…紫原は三倍だ」

「ちょっとみんなひどい!もうっ!おいてかな いでよ、ってだれ?」

「キャプテン「「赤司「赤ちんの「俺の婚約者 だ」保護者ー」なのだよ」だとよ」らしいッ スー」

「征十郎くんの、いえ、赤司くんの遠い親戚兼 保護者の黒子テツナです。みなさん、彼と末永 く仲良くしてあげてください。さみしがり屋で すから」

「「「「「さみしがり屋!?」」」」」

「私は桃井さつきって言います…あの、黒子さ んって失礼ですけどおいくつですか」

「二十三です」

「え?嘘ですよね?え?」

「さつきが老け顔に見えるな。」

「童顔なのだよ」

「桃っちは大人っぽいッスからねー」

「桃ちんも黒ちんもかわいいー」

「こら、だめですよ。女の子は宝石っていうで しょう?それに桃井さんはこんなに可愛らしい お方なんですから」

「く、黒子さん…!いや、テツちゃん!!私の お嫁さんにこない!?」

「桃っちずるいッス!」

ガヤガヤとしだす中学生に微笑ましく思う。

「ねぇ、テツナ」

「はい?なんですか?」

「付き合ってるやつとかいる?」

「…相手さえいませんよ」

「じゃあ僕はどうだ。父さんにお願いしてある んだ。テツナを婚約者にしてくれって」

「ー…え?」



つづく
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