新選組変化録

□斎藤さんはじめエモンの巻
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私は雪村千鶴。
近くの高校に通う二年生だ。
しかし二年生になってクラス替えがあってから私はあまり高校に行きたくなくなっていた。

クラスの女子と何となく反りが合わず、気付けばクラスの中で一人になっていた。
時には嫌がらせさせる事も度々で、学校に行く事が苦痛な毎日だ。


その日も私は漸く針の筵ともいえる学校から帰宅し、自分の部屋に入ると驚く事が巻き起こったのだった。





「ただいま〜。」

玄関から小走りでキッチンの横を通り過ぎながら母親に挨拶をする。

「お帰り。全く!!家の中は走らないのよ!!」

母の忠言もそこそこに流し、私は自分の部屋へと入るとパタンと後ろ手に扉を閉めた。

学校でうまくいっていない事は母には内緒だ。
キッチン横を足早に通り過ぎるのは、学校の事を色々と聞かれたくないからだ。

「…はぁ…。」

私は大きく溜め息をついた。
その時だった。



ガタガタガタッ!!
ガタガタガタッ!!



「な!?何っ!?地震!?」

突然何処からか揺れる音がした。
地震かとも思ったが、自分自身は揺れていない。

部屋の中を見回すと、どうやら私の勉強机の引き出しの様である。

私がゴクリと固唾を飲んで揺れる引き出しを見詰めていると。


バッ!!


「キャア!!」

勢い良く引き出しが開いた。

―ま、まさか何かのポルターガイストじゃないでしょうね!?―

恐怖の為、僅かに勉強机から距離をとる私。

すると、開いた引き出しの淵に人の手が掛けられるのが見えた。
そして…。




「ぎ、ぎゃぁぁぁあ!!貞子ぉぉぉお!!」

信じられないが、いきなり引き出しから人が顔を出した。
長い前髪、色白の肌…テレビで見た事がある。
これは正しく貞子!!

半狂乱になって騒ぎまくる私を余所に、貞子は引き出しに足を掛けいよいよと此方へ出てきた。

「待て。貞子というのは誰の事だ?俺は貞子という者ではない。すまぬが人違いだ…。」

当然襲って来るものだと思っていた私は布団を盾にきつく瞑っていた目をそっと開けた。

「だ…誰?」

おそるおそる訊ねると目の前のその人は言った。

「雪村千鶴というのはお前か…?俺は新選組三番組組長、斎藤ー。お前を守る為、江戸の時代よりここへやって来た。」
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