新選組変化録

□土方さんとしぞうエモンの巻
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私は雪村千鶴。
近くの高校に通う二年生だ。
しかし二年生になってクラス替えがあってから私はあまり高校に行きたくなくなっていた。

クラスの女子と何となく反りが合わず、気付けばクラスの中で一人になっていた。
時には嫌がらせさせる事も度々で、学校に行く事が苦痛な毎日だ。


その日も私は漸く針の筵ともいえる学校から帰宅し、自分の部屋に入ると驚く事が巻き起こったのだった。





「ただいま〜。」

玄関から小走りでキッチンの横を通り過ぎながら母親に挨拶をする。

「お帰り。全く!!家の中は走らないのよ!!」

母の忠言もそこそこに流し、私は自分の部屋へと入るとパタンと後ろ手に扉を閉めた。

学校でうまくいっていない事は母には内緒だ。
キッチン横を足早に通り過ぎるのは、学校の事を色々と聞かれたくないからだ。

「…はぁ…。」

私は大きく溜め息をついた。
その時だった。



「動くな…動けばこの刀でお前の喉を貫く…。」

「ヒィッ!!」

いきなり物陰から現れた誰かに私は後ろから身を拘束され、喉元に刃物を突き付けられた。

―な、何っ!?強盗!?―

私は身を強張らせた。

「あ、あの…家、お金なんて無いんで…。」

「名を名乗れ。」

―はい!?この人、何を言ってるの!?―

言った事と全く関係ない事が返ってくる。
しかし、刃物を持ったその手は私が彼の言う事に反発出来ない事を示していた。

「…雪村…千鶴…です。」

私が渋々彼の問いに答えると、彼は耳許で言った。

「…いいか?大声は出すな。大人しく俺に従っていれば悪いようにはしねぇ。」

そう言ったのと同時に私を拘束していた腕が弛めれた。

私は恐る恐る振り返るとそこには一人の時代錯誤な人が立っていた。

―何?武士のコスプレ?この人変態?―

私が怪訝な顔で見ていたせいか、その人は不機嫌に眉間に皺を寄せて再び私の顔の前に刀らしき刃物を突き付けた。

「何だ?何か俺に言いてぇ事でもあるのか!?」

―そりゃあありますよ!!貴方は誰?とか、何で私の部屋にいるの?とか、その格好は何?とか!!そりゃ聞きたいですよ!!―

「…い、いえ…何も。」

私はそんな心の叫びを胸に押し込んでそう答えた。

するとその人は少し溜め息をついて私に向けた刀を納めた。

「手荒な事をしてすまなかった。俺は新選組副長、土方歳三だ。江戸の時代からお前を守る為にやって来た。少しの間世話になる。」
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