新選組変化録

□沖田さんそうじエモンの巻
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私は雪村千鶴。
近くの高校に通う二年生だ。
しかし二年生になってクラス替えがあってから私はあまり高校に行きたくなくなっていた。

クラスの女子と何となく反りが合わず、気付けばクラスの中で一人になっていた。
時には嫌がらせさせる事も度々で、学校に行く事が苦痛な毎日だ。


その日も私は漸く針の筵ともいえる学校から帰宅し、自分の部屋に入ると驚く事が巻き起こったのだった。





「ただいま〜。」

玄関から小走りでキッチンの横を通り過ぎながら母親に挨拶をする。

「お帰り。全く!!家の中は走らないのよ!!」

母の忠言もそこそこに流し、私は自分の部屋へと入るとパタンと後ろ手に扉を閉めた。

学校でうまくいっていない事は母には内緒だ。
キッチン横を足早に通り過ぎるのは、学校の事を色々と聞かれたくないからだ。

「…はぁ…。」

私は大きく溜め息をついた。
その時だった。



「お帰りなさい。」

「うん、ただい…。」

私はそこまでいいかけて言葉を止めた。

―お帰りなさい。って…誰っ!?―

ここは私一人の部屋、誰かがそんな声をかけてくる筈がない。
私は驚いて声のする方向に顔を向けた。

「随分と遅かったね。君のお陰で待ちくたびれちゃったじゃない。雪村千鶴ちゃん?」

そこには見た事もない風変わりな格好をしている男の子が私の勉強机の端に少し腰を下ろしながら漫画を手にしている。

「あっ!!それっ!!私の漫画!!…って…それ所じゃない…貴方誰なのっ!?何で私の名前知ってるの!?」

―私の名前を知ってるって事は…私が知らない親戚か何か?―

私がそう思いながら訊ねると、彼はパタンと手にしていた漫画を閉じ、何やら楽しそうに口角をあげると私に近付きながら言った。

「へぇ♪君、僕の事知らないの?新選組の沖田っていったらもう少し顔も売れてると思ってたんだけど、まだまだだね僕も。もっと頑張らなきゃいけないのかな。」

―は?新選組?沖田?何だかよくわからないけど何なのこの人。―

私が警戒の色を強めると目の前のその人はニコリと笑って言った。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ千鶴ちゃん♪僕は新選組一番組組長沖田総司。江戸時代から君を守りに来たんだ。」

呆然とする私。

「まあそういう事だから。よろしくね。」

そう言って彼は再び閉じた漫画を開く。

「…よ、よろしくねって…。」
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