新選組変化録
□ファーストフード壬生
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季節は春。
誰もが浮き足立つ季節。
何もかもが新鮮に見えるこの満開の桜の時に私、雪村千鶴もめでたく高校入学を果たしたのである。
何より嬉しかったのは。
「千鶴ちゃん!!一緒に帰ろう?」
「うん!!」
私に話しかけてきた中学校から仲良しのお千ちゃん。
彼女と同じクラスになれた事だ。
「千鶴ちゃん、同じクラスになれてほんと良かったね。私、今日学校に来るまでドキドキだったんだよ!!」
「あはは。それは私だって同じだよ。知ってる人も何人かいたけど、やっぱり仲良くしてる人がいると違うよね。」
一緒のクラスになれた事をお互いに喜びつつ、私達は桜のチラチラと舞い落ちる校門を出た。
真新しい制服、真新しい鞄の匂い。
―遂に高校生になったんだな。―
そう染々と感じながら瞳を閉じていると、急に横を歩いていたお千ちゃんがそういえば!!と大きな声を上げた。
「千鶴ちゃん!!私達もめでたく高校生になってクラスも決まった訳だし、あとはアルバイトよね!!」
「ア、アルバイト!?」
急に持ち上がってきた単語に私は目をパチクリさせる。
お千ちゃんは昔からどうも話の展開が早い。
入学早々、既にアルバイトまで考えているなんて思いもしなかった。
「勿論、一緒にやるわよね?」
「えっ?」
面食らっている私にお千ちゃんは当然と言わんばかりの満面の笑みを向け、何やら鞄から取り出した。
「そうと決まれば忘れないうちに…ねっ♪」
そう言って手渡されたのは。
「ファーストフード〃壬生〃???」
とある求人チラシだった。
「そ♪ファーストフード〃壬生〃。このお店ね、今度壬生に新規オープンするらしいのね。普通の求人だとどちらか一人とかしか雇ってもらえないかもしれないけど、新規オープンするお店なら沢山人手がいるじゃない?きっと二人でも雇ってもらえるんじゃないかって考えたの。」
「そうなんだ…。」
私はしげしげとそのチラシを見詰める。
流石お千ちゃん、二人で雇ってもらえるようにするところまで考えているなんて凄い。
「ね、千鶴ちゃん。ファーストフード店なら高校生のバイトの醍醐味みたいな感じだし、そのチラシあげるから電話して面接受けてみて?」
結局私はお千ちゃんの勢いに乗せられた感じでそのファーストフード〃壬生〃に面接の申込をする事になった。