新選組色恋録

□陽月の焔・壱(沖田side)
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「…きゃっ!!ち、ちょっと!!…え!?お、沖田さん!?」

僕が突然廊下で後ろから羽交い締めにした小さな華奢な体は、意図も容易く僕の腕の中に捕獲された。
この可愛い叫び声で鳴いた彼女こそ、僕の想い人。千鶴ちゃん。

そのポカンと口を開けた表情で腕の中から僕を見る千鶴ちゃん。
どうやら僕がどうして君を突然捕獲したのか、君は全然解っていないみたいだね。

「千鶴ちゃん。何処行くの?」

「えっ!?…ええと…。」

腕の中の彼女をそのままに、僕は訊ねた。
彼女は言い澱むけどそんなの、僕が気付いてないと思ってる?

「ねぇ千鶴ちゃん。僕、今日非番なんだ。だから一緒に遊ぼう?」

捕らえた彼女を更に後ろから強く抱き締めて言いながら、僕は視線を僅かに中庭に向けた。




ちょっと離れた位置に剣術の修練をしていたと見える一くん。

彼女の叫び声に反応したのか、修練の手を止めて汗だくに滴った髪を拭う事もなく此方を見詰めていたが、僕の視線に気付いたのか一くんは僅かに視線を逸らした。


そう、僕は僕の少し前を歩いていた千鶴ちゃんが、中庭にいた一くんを見付けて一くんの所に駆け寄ろうとした所を羽交い締めにしたのだ。

「何か大切な用事でもあったの?」

解っていて彼女の耳元でこんな事を聞く僕は意地悪なのかもしれない。

「…い、いえ別に…。」

よく言うよ。
一くんとお話したかった癖に。

心の中に突如起こった赤い焔を僕は目だけで中庭の一くんに向けた。

「そ、じゃあ何の問題も無いよね?僕の部屋に行こう?」

わざと一くんに聞こえる様な声で言い放ち、千鶴ちゃんの手首を掴んでグイグイと引っ張って行く。

「ちょ、ちょっと!!沖田さん!?」

困った顔で僕を見るけど、そんなの今の僕には関係ないね!!
だって僕は怒ってるんだよ?
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