新選組色恋録
□陽月の焔・弐(沖田side)
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―夜―
昼間、土方さんから一方的に謹慎を言い渡された僕は部屋の縁側で白んだ月を眺めていた。
幸いまだ見張りはつけられていないらしい。
見張りがつけられていたらきっと、僕はこの月さえ眺める事が出来ないだろう。
―わかってるんだ…。僕が悪い事は…全部―
ただ抑えられなかった。
自分の感情を…。
自分がむやみに触れられない千鶴ちゃんに容易く触れる左之さんを見て…。
「…はぁ…僕が一番大切にしたいのに、一番泣かせてるなんて…。」
最低だと認めたくなくて、次の言葉を飲み込む。
「少し…風に当たろうかな…。」
もう充分過ぎる程風に当たってはいたが、やりきれなくなって僕はフラリと中庭へと足を向けた。
するとそこに重なりあう2つの影が見えた。
―?―
僕は身を潜めて身構えた。
―こんな刻限に何者だ?―
月明かりの中、ぼんやりとその姿を捉える。
―!!!―
僕の身は血の気が失せて、思わずその場に崩れそうにすらなる。
一度本能的に目を逸らし、見たくはなかったが、僕はもう一度、その姿を確認する。
間違いなかった。
それは紛れもなく一くんと千鶴ちゃんが抱き合う光景だった。