新選組色恋録
□輪廻〜運命の誓約〜
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俺は運命(さだめ)なんて信じねぇ…。
信じちゃいねぇ。
俺の人生を左右させられる事があるとすれば、それは俺の決断だけだ。
俺の決断を歪められる物など。
―この世にはねぇ…。―
「土方先生。そろそろ…。」
「ああ…すいません。今行きます。」
俺は土方歳三。
高校の歴史担当の教師だ。
新学期が始まった四月、俺はこの薄桜高校の教師として他校から転任してきた。
「受け持ちは一年A組ですのでよろしくお願いします。」
「はい。」
それだけ言うと途中まで一緒に廊下を歩いてきた二年の担任は階段を昇って行った。
一人になった俺はふぅっと溜め息をつき、名簿で肩をトントンと叩きながらまだ慣れない校舎の中の廊下を歩いた。
―転任早々一年の担任か。―
俺自身がこの学校に慣れていないというのにその慣れていない先公が、右も左もわからねぇガキにこの学校の事を教えるたぁ何だか滑稽だ。
―もう少し何とかいう人事はなかったのかよ…。俺だったらこんな人事はしねぇな…。―
そんな事を思いながら俺は1ーAの扉を開けた。
緊張した視線が一気に俺の方に向けられる。
しかし俺はこういう時、何故だか優しく微笑むとか、少しでも気を緩めてやれる言葉だとか、そういうものが苦手だ。
「…。」
暫くすると生徒達の顔が一層強張った。
恐らく、俺の眉間にまた皺が寄っているか何かか?
前の学校でも人知れず〃鬼教師の土方〃と生徒に陰口叩かれているのは知っていたから何となくだがこいつらの考えている事は解る。
「…先程の入学式で解っていると思うが、今日からお前達の担任になった土方だ。出席をとる。」
そんな事も気付かぬふりで流して、俺は平然と自分の仕事をすべく、名簿を教台に開いた。