新選組変化録

□斎藤さんはじめエモンの巻
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そんな斎藤さんが私の部屋に現れた日から数日が経ったある日―。



ダダダダダダダッ!!
バタンッ!!




勢い良く外から家に飛び込んだ私は部屋に続く階段を駆け上がり、部屋に入ると扉を閉めた。

そしてそっと窓の方に近寄るとカーテンの隙間から外の様子を窺った。



―まだいる…。―


外には私を追いかけて来たクラスメイトが五人。
こちらを憎々しげな顔で見上げていた。


―まさかこんなとこまで追いか…。



「んぐっ!!」

完全に外に気を取られていた私は、急に背後から誰かに首を片腕で絞められてジタバタと足をばたつかせた。

「んぐぐっ!!んぐぐ〜っ!!」

「…何だ、あんたか…。」



ドサッ!!


「い…痛ぁ〜い。」

誰かが背後で呟いたかと思うと、力強く絞められていた腕がパッと緩められ、私は床に尻餅をついてしまう。

振り向き仰ぐと、そこには斎藤さんが立っていた。

「い、いきなり何するんですかっ!!」

「すまん。あんただと思わなかった。」

私が少し口調を強めると斎藤さんは意外にも簡単に謝ってきた。

「普段とは明らかに違う殺気で部屋に飛び込んで来た故、刺客か何かだと思ったのだ。」

「…。」

私は返す言葉も見つからなかった。




―…っていうか斎藤さん…この時代に刺客なんていません!!



「時にあんたは一体何を見ていた?」

完全にフリーズしていた私を余所に、斎藤さんは先程まで私が見ていた方向をカーテンの隙間から窺っている。

私を追いかけて来たクラスメイト達はそこにはもういない。

「…痛っ!!」

「どうした?」

安心したからだろうか、ある事を思い出した。
クラスメイト達に絡まれてからがら逃げてくる途中に転んでしまった事を。

「怪我をしているのか?血が出ている。」

「…少し転んでしまって…。」

「…そうか、直ぐに手当てしよう。そこに座れ。」

私は斎藤さんに促されるまま、椅子に腰かけた。



―何だろう…よくわからないけど…何となく斎藤さんがいてくれて良かったと…少し思った。
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