新選組変化録

□土方さんとしぞうエモンの巻
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「兎に角、さっきから何度も言っているが俺はお前を守りにここまで来たんだ。怪しいもんじゃねぇ!!」

「…怪しいもんじゃねぇ…と言われましても…。」

私は土方さんと名乗ったその人を上から下まで見下ろした。
土方さんの話では自分は私の部屋の勉強机に繋がるタイムマシーンに乗って私を救うために江戸時代からやって来たと言うのだけど…。

―この格好で怪しい者じゃありませんって言う方がどうかしてるよね…絶対。―

相変わらず眉間に皺を寄せるその人に私は前置きをしながら言った。

「すいません…怒らないで聞いてもらえますか?」

「何だ?」

―何だ?って既に怒ってるじゃんか!!―

更に渋面になる土方さんに私はそう思いながらも言った。

「あの…その格好おかしいですよ?」

すると土方さんは意表を突かれた様に腕組みをしたままポカーンと固まった。

「土方さん?」

「ああ…いや…悪ぃ…まさかそんな事を言われるたぁ思ってなかったからよ。」

そして土方さんは改めてマジマジと自分の格好を確認している。

「…そんなにおかしいか?」

どうやら土方さんは結構容姿には拘る人らしい。
何やらブツブツ呟いている。

―この様子だともしかして本当にタイムスリップしてきたの?―

半ば半信半疑だったが、私は土方さんに近くにあった雑誌を開いて見せた。

「ほら、男の人っていうのはこういう格好をするものなんですよ?」

「こ、これはっ!!」

すると土方さんは驚愕したように、雑誌を手に齧りついている。

そして土方さんは此方に目を向けて言った。

「これは何処で手に入る?」

―えっ!?もしかして買うんですか!?―

「ええと…洋服売ってるお店なら…何処でも買えると思うんですけど。」

「そうか。」

土方さんは短くそう返しただけでそれ以上何も追求して来なかった。

「取り敢えずお前の言い分は解った。俺の格好がこの時代にそぐわないって事もな。俺の事が信じられねぇって言うならそれでいい。今すぐに信じろとは言わねぇ。ただ、お前が困った事があった時は直ぐに俺に知らせろ。わかったな?」

―わかったな?って全然わかりませんけど!!―

そう思いながらも土方さんの有無を言わせぬその鋭い視線に私は何も言うことが出来ず、信用は出来ないものの土方さんを受け入れる事になってしまった。
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