新選組変化録
□沖田さんそうじエモンの巻
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沖田総司と名乗ったその青年は、その後もこちらの言う事などそっちのけで、あくまでマイペースを貫いていた。
「だからさぁ。何度も言ってるじゃない。君、もしかして凄く頭悪いんじゃない?」
―はぁぁぁあ!?勝手に人の家に入り込んで来た癖に、何なの!?この態度!!―
私は怒りで震える体を押さえながら何とか平静を装って答える。
「あ、あのね?だから私は、貴方がタイムマシーンに乗って江戸時代からこの平成の時代に来たっていうのがどぉぉぉおしてもっ理解出来ないの!!」
すると沖田さんはキョトンとした顔をして私を見る。
「な…何?」
何か変な事を言ってしまったかと思い訊ねると。
「だから、タイムマシーンじゃないって。『瞬間時代移動駕籠』だってば。…君、本当に頭悪いんだ?」
徐にかわいそうと言わんばかりの顔で見詰められる。
本当、この人って何でこう一言一言が人の神経逆撫でる様な言い方するのかしら。
―いいわよ!!そっちがその気ならっ!!―
私はスクッと立ち上がると仁王立ちして言った。
「わかった!!そんなに言うなら信じる!!だけど信じるにはやっぱりその『瞬間時代移動駕籠』を見せてもらわないとね!!」
―どうよ?これで貴方の負けよ?―
完全に勝利を確信した私はニヤリと沖田さんを上から見下ろす。
すると…。
「いいよ。」
「へっ!?」
沖田さんはしれっとした顔で立ち上がると私の勉強机の引き出しを開ける。
「ちょっと!!何す…。」
「はいどうぞ♪」
私が噛みつくのを制する様に沖田さんが引き出しの中を指差した。
「なっ!!何これっ!!」
その先を覗き込んだ私は夢を見ているのかと思うくらいの衝撃を受けた。
引き出しの底は深くなっていて、そこに時代を感じさせる駕籠が置かれていた。
「ほら、嘘じゃないでしょ?」
「…。」
私が言葉を失っていると。
「そこからじゃ良く見えないでしょ?何なら…もっと近くで見てみる?」
「へっ!?ちょっ!!キャァァア!!」
刹那私の背中を沖田さんが軽く押した。
私の体は引き出しに乗っかりぶら下がる形になってしまった。
「た、助けてぇえ!!」
足をジタバタさせている私を尻目に沖田さんは声を上げて笑っている。
「あははは♪気を付けなくちゃ駄目じゃない。」
そう言いながら沖田さんは私の体を引き上げる。
―うぅ…酷い目にあった。―
私がゲッソリとしていると沖田さんがまたしれっとした顔で言った。
「あ、そうそう。この時代の下着って派手なんだね。縞模様の下着なんて初めて見たよ。」
―パ…パンツ見られた!?!?!?―
「○×△☆〜!!!」
私の表情を見てニヤリとする沖田さん。
―…何だか…疲れた…。―
私はそれ以上沖田さんと張り合う気力を無くし、何だか訳のわからないまま沖田さんを受け入れる事になってしまった。