新選組変化録
□ファーストフード壬生
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家に帰った私は勉強机の前に座ると、お千ちゃんからもらった求人チラシを鞄の中から取り出した。
―まさかこんな展開になるとはな。―
だけどお千ちゃんと面接を受ける事を約束してしまった。
いつまでもチラシを前にしてにらめっこともいかない。
―ちょっと緊張するけど、かけてみよっかな。―
私はチラシを机の前に置くと、携帯をダイヤルし始めた。
RRRR…RRRR…
電話越しに聞こえる呼び出し音が途絶えた。
『お電話有り難うございますっ!!毎度お馴染みファーストフード〃壬生〃永倉新八とは俺様の事っ!!』
―!!…な、何なの!?ファーストフード店ってこんなノリだったっけ?毎度お馴染みってまだオープンもしてないんだよね!?…しかもこの人…フルネーム名乗っちゃってるよ…。―
電話に出たその人は声が大きすぎて外まで音漏れする程元気な声で電話に出た。
『もしも〜しっ!!もしも〜しっ!!…あれ?聞こえてねぇのかな!?…んったくっ!!何だよ、オープンする前からもう壊れてんのかこの電話。勘弁してくれよ〜。バンバンバンバンっ!!』
私が呆気にとられて黙ってしまっていたせいか、電話向こうのその人永倉さんは、電話が壊れたと思ったのか受話器を徐に叩いているようだった。
「ああああのっ!!ごめんなさい!!聞こえてます!!」
私が大きな声で言うと永倉さんはなんだ聞こえてんのかと呟いた。
『で、何の用だったんだ?』
そう問われて若干イタイ人なのかな?とも思いながらも、どこか憎めない屈託の無さに私は本題を切り出した。
「あの、アルバイトをしたいので面接をして頂きたいのですが…。」
私が恐る恐る口に出すと、永倉さんはおおっ!!と言いながら更に声のトーンを上げた。
『バイトか!!大歓迎だぜ!?可愛い女の子なら更に大歓迎だ!!』
「はぁ…可愛いかは…わかりませんが…。」
『よしっ!!この俺様が電話に出たのも何かの縁だ!!俺が土方さんに話つけといてやるからよ!!ドーンと大船に乗った気で面接に来い!!』
「ひ、ひじ…???」
知らない名前を出されて戸惑っている私を気にも止める事無く、永倉さんは面接日時が決まったらまた連絡すると終始興奮した様子で一方的に電話を切られた。
ツーツーツーツー…
「一体…何だったの?」
通話が途絶えた携帯を握りしめたまま私は暫くの間、点になっていた。