新選組色恋録

□鬼の懐中時計(沖田総司編)
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それから数日間、幹部の間で私が預かった懐中時計の合議が開かれたようで。
未来に偵察を兼ねて行ってみるという案と、どんな危険が待つかしれない未来に行くのは無謀極まりないという反対意見がぶつけられたようだ。

結局、話は堂々巡りを続けるので、沖田さんが『最初にこの件を見付けたのは僕だよ?だったらどうしたいかの意思判断はまず僕にあるんじゃないかなぁ。』と言い出した事で、沖田さんの意向で未来へと行ってみる事に話は落ち着いた。

そこまでは良かったのだけど…。

「で、何で私も沖田さんと一緒に未来に行く事になってるんですか!?」

沖田さんの同行者は私。と、先程近藤さんから正式に任ぜられた。

「仕方ないよ。知識も経験もない土地に一人で行く訳にはいかない。一人だと何かあった時にそれをこっちに伝える術がないからね。だからって鬼が関わってる一件を平隊士に話す事は出来ないし、幹部を二人で行かす事も、今度はこちらの任務が回らなくなるからね。状況を熟知している人間で、幹部でもない。立場的に一番適任だと思わない?」

それに君は当事者だしね。と、さらっと笑顔を作る沖田さんに私も何も言えなくなってしまう。

「…まぁ、それはそうですね。当事者っていうのは本当にそうですし。」

かんねんしたところに、ふと一つの疑問が浮かんだ。

「そういえば沖田さんは何で未来に行くって意見をみんなにそこまでして納得させたんですか?」

「…。」

急にさっきまで饒舌だった沖田さんの口が止まり、表情が強張った。

…あれ?私何か悪い事でも聞いちゃったのかな。

「あ、そろそろお茶の刻限ですね。私、皆さんにお茶とお団子用意してきます。」

私は気まずさから咄嗟に立ち上がり、その部屋を後にした。
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