新選組色恋録

□陽月の焔・壱(沖田side)
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僕は廊下を引き摺る様に千鶴ちゃんを自分の部屋の前まで連れて来ると、自室の襖を開けて、彼女を部屋に押し込む。
閉じ込める様に後ろ手に襖を閉めると、千鶴ちゃんでも流石に僕が放つ殺気に気付いたのか恐る恐る訊ねて来る。

「…お、沖田さん?何か怒ってますか?」

「別に!!」

心と裏腹の声を上げた僕だけど、彼女は引くしか無かったのか、そうですか、と小さく呟いて部屋の真ん中にちょこんと座った。

その千鶴ちゃんの座り姿すら僕には本当に可愛くて、今すぐこの場で抱き締めてしまいたくなるくらいだけど、僕にはそれも許されない。



そう…千鶴ちゃんは僕の物ではないから…。


僕は紅く燃えるこの恋心を彼女に伝える事が出来ない。
僕の素直じゃない性格に、千鶴ちゃんの鈍感さが手伝って上手く愛の言葉を紡げない 。

でも僕は知ってるんだ。
毎日君をよく見ているから。
他のみんながどんな目で君を見ているか。

鈍感な千鶴ちゃんが気付かない分、気付き過ぎるくらい敏感な僕には、正直君の他のみんなに対する行動は胸を切り裂かれる思いをする事がある。



その中でも一くんは僕の中で特に要注意人物だった。
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